IPOの副産物で新たな自社プロダクトも
――自社開発の独自アプリケーションもラインアップを増やしている印象です。
自社プロダクトは収益力が非常に高いわけです。ビジネスを育てるのに時間もコストもかかりますが、損益分岐を超えると全社の収益力改善につながるし、自社のブランド力を上げてくれるというメリットもあります。
既存製品もいくつかあって、重点商材として拡販していこうとしているのがクラウド型シフト管理システム「SHIFTEE」と建築業向け工事情報管理システム「建て役者」、モバイル受発注システム「MOS」の三つですね。大規模なお客様の導入事例も出てきていますし、中には損益分岐を超えた製品もあります。
また、今回のIPOの副産物として、自社のためにつくったシステムもあって、これがなかなかいいんですよ。内部統制を強化しつつ、社員の勤怠や受発注、販売管理、請求などを統合的に管理する基幹システムなんです。パッケージ製品として機能モジュールごとに単品で売り出そうと考えています。出退勤の時間を入力する時に、自分がどんなプロジェクトにどれくらい時間を使ったかなどを入力してプロジェクトの進捗管理にも役立てるようにしたのですが、生産性が上がって、残業時間が13%減ったという効果も出ています。
――これからの成長という観点では、どのように数字を積み上げていくイメージでしょうか。
売り上げは10%くらいの成長を常に意識しています。やはり10%くらい成長しないと利益も増えないし、社員の給料も増やせないので売上高の拡大はすごく大事です。100億円を超えてもそれは継続したいですね。 また、上場にあたって投資家に指摘されたのは、利益率が低いということです。現状は4%弱ですが、業界平均でいうとSI系の上場会社の利益率は6%くらいです。投資は継続しながらも、同水準の利益率を確保できるようにしたいと考えています。
Favorite Goods
視力は悪くないが、老眼の影響で遠近両用の眼鏡が手放せなくなった。現在では「眼鏡をかけているほうが集中力が増す」そうだ。メガネフレームは福井県産で、軽く、装着していてもストレスがないのがお気に入りのポイント。
眼光紙背 ~取材を終えて~
20年越しで果たした「石川県内IT企業の上場」
今年8月に東証マザーズに上場した。人材の獲得競争になった時に、東京のベンダーにブランド力で負けないための決断だったというが、東京に本社を移す予定はない。「パブリックカンパニーになることが重要。その後は、むしろ地方から出てきた会社が独自の強みを生かして東京の会社と戦うという独自のヒストリーとストーリーこそが差別化のポイントになる」と考えているからだ。
小清水氏が社長に就任した1994年当時のシステムサポートは、本業ではない不動産投資などに事業を広げたことが災いし、バブル崩壊により累積赤字が1億3000万円まで積み上がり、2億4000万円の負債を抱えた状況だった。「社長ではなかったが創業者の意識はあった」という小清水氏に託された経営再建は、見事に成功。4年後には黒字化を実現した。
黒字化のタイミングで、石川県のベンチャー大賞奨励賞を受賞したことが大きなターニングポイントになった。授賞式でアイ・オー・データ機器の創業者で現会長の細野昭雄氏から「アイ・オー・データ機器以降、石川県からIT系の上場企業が出ていない。ぜひ奮起してほしい」と激励された。これが、上場を目指す最初のきっかけになった。約20年越しの目標を達成したことになる。
プロフィール
小清水良次
(こしみず りょうじ)
1956年5月生まれの62歳。石川県白山市出身。名古屋商科大学商学部卒。80年10月、システムサポート入社。90年に専務取締役、94年に代表取締役社長に就任。グループ会社のイーネットソリューションズ代表取締役会長、STSメディック代表取締役会長、STS Innovation,Inc. Director、アクロスソリューションズ代表取締役会長、STS Innovation Canada Inc. Directorも兼務する。業界団体、地元経済界では、一般社団法人石川県情報システム工業会副会長、金沢商工会議所評議員も務める。
会社紹介
石川県金沢市に本拠を置くシステムインテグレーター。1980年設立。社員数は2018年6月末現在で725人。18年8月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。