車載/IoT、医療、海外は今後さらに伸ばす
――ほかにはどんな重点事業がありますか。
クラウドとセキュリティーです。オンプレミスとクラウドのハイブリッド化の需要に対応するため、今、首都圏の主力データセンター(DC)第2期棟の建設準備を進めています。12年に開業した2300ラック相当の大型自社DCは、おかげさまでほぼ満床になりました。同時被災の可能性が極めて少ない当社沖縄DCとの相互バックアップも好評をいただいています。セキュリティーについては当社の注力商材である「ESET(イーセット)」が主に端末側のセキュリティーとしてシェアを伸ばしていますので、クラウド側でのセキュリティー商材の開発にも一段と力を入れていきます。
また、エンジニアリング事業として、車載を中心とした組み込みソフト開発、IoT領域のビジネスにも積極的に取り組んでいきます。車載向けでは車載OS「AUTOSAR(オートザー)」を開発する名古屋のAPTJに一部出資し、共同で事業を推進しています。
――キヤノンメディカルシステムズ(旧東芝メディカルシステムズ)との連携はどうでしょう。
医療ITビジネスは、キヤノンMJグループとしてどのような体制にするのかを考えていかなければなりません。すでにキヤノンMJにキヤノンメディカルシステムズの製品やサービスについて顧客からの問い合わせも来ています。
――ほかにも課題があるとすれば、どのあたりでしょうか。
中小・中堅企業ユーザー向けのITソリューションビジネスを、地域ビジネスを担当しているキヤノンシステムアンドサポートと連携して、一層伸ばしていきたいですね。そういう意味では、海外ビジネスの事業規模もまだまだ小さいと言わざるを得ません。このあたりの課題感は常に持っています。
中国・ASEANに向けては、例えばネットワークカメラを使った防犯システム、正規品かどうかをトレースできる真贋判定システムなど、キヤノングループならではの強みを生かしたビジネスが伸びています。ネットワークカメラでは、キヤノングループでスウェーデンに本社を置くアクシスコミュニケーションズに加えて、同じくキヤノングループでデンマークに本社を置くビデオ管理ソフト開発大手のマイルストーンシステムズとの製品連携もより深めていきます。
キヤノンMJグループの強みは、キヤノン製品や国内外グループ会社、またはビジネスパートナー製品・サービスを自社のITソリューションビジネスに生かせる点にあります。こうした特色あるビジネスを積極的に展開しています。
Favorite Goods
高級腕時計を数種類持っている。おしゃれでエレガントなデザインの「カルティエ」ブランドや、少しごつい感じの「ガランテ」ブランドなどがお気に入り。「その日の予定や、会う人に合わせるように腕時計も選んでいる」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
組織の壁はできる限り低く、自分の言葉で話す
組織の壁はできる限り低く、上下左右風通しよく――が、足立社長のこだわりである。このスタイルの原点にあるのが、入社間もない頃の配属先での営業経験だ。1980年代、製品カタログを持って新規顧客を訪問したが、顧客企業の反応はいまいち。
ある日、訪問先の金融業の顧客で、「海外では手形をこんなふうに印刷する動きがあるそうです。私だったらこうしますけどね…」などとアドリブを交えた。すると、その顧客がじっとこちらを見て「そう、そんなふうにあなた自身の言葉で話してほしかったんだよ」と話してくれた。自由な発想が大切だと気づいた。
以来、カタログを持ち歩くのはやめた。顧客の業界動向を新聞や雑誌で仕入れ、同業他社の動向もくまなくチェック。業務改革のアイデアをまとめて顧客に話していくうちに商談が次々とまとまるようになった。
縦割り組織や上司・部下の権限の細分化は、アイデアの幅を狭める。風通しよく、必要とあればグループ内外の人たちと連携する。あらゆる業種・業態に浸透するITソリューションだからこそ、こうしたスタイルがより生きてくる。
プロフィール
足立正親
(あだち まさちか)
1960年、神奈川県生まれ、東京育ち。82年、学習院大学経済学部卒業。同年キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)入社。2007年、ビジネスソリューションカンパニーMA販売事業部金融営業本部長。09年、MA販売事業部長。11年、執行役員。13年、上席執行役員。15年、取締役常務執行役員。18年1月、取締役常務執行役員エンタープライズビジネスユニット長(現任)。18年3月26日、キヤノンITソリューションズ代表取締役社長に就任。
会社紹介
キヤノンITソリューションズは、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループでITソリューション事業の中核を担うSIerである。キヤノンMJグループのITソリューション事業の今年度(2018年12月期)売上高は前年度比6.6%増の1960億円の見込み。20年12月期には2370億円に増やす計画を立てる。将来的には3000億円規模を目指す。