メーカー機能を持つことの強みを生かす
――IoTと言えばアームもソフトバンクグループ傘下に入りました。
現時点ではアームのビジネスを大々的にやっているという感じではありませんが、今後は拡大する可能性があります。グループ全体としては、IoTのチップから、端末、ネットワーク、データを貯めるクラウド、それを分析するソリューションまで、トータルソリューションを構築していますが、大きな案件でも小さな案件でも、IoTには必ず機器が必要になります。チップを端末に組み込むところのつくり込みをしていかなければならないわけで、グループの中でものづくりができるのは当社だけですし、アライアンスも多くさまざまなノウハウがあります。グループ内でのIoTビジネスのけん引役としてアームと連携する場面は増えてくると思います。
――メーカー機能についてはコンシューマー向けのモバイル周辺機器が中心ですが、法人向けITビジネスとの相乗効果はあるのでしょうか。
これはもう確実にあります。先ほど法人向けITビジネスの領域が拡大しているという話題が出ましたが、ITがユーザーのビジネスそのものを大きく変えてしまう可能性があるということは、ユーザーの顧客のことまでを視野に入れた提案が必要になるということです。スマートフォン向けアクセサリーなどでコンシューマービジネスのエンドユーザーと直接接点を持ったことが、B2B2Cまで見据えたソリューション構築に何が必要なのか理解するのに役立ったのは間違いありません。IoTのマーケットを開拓していく上でも、コンシューマーのことを理解しているのは重要なことだと思っています。
――来年1月1日には「SB C&S」に社名変更されます。どんな意味があるのでしょうか。
ここに来て次の世代のテクノロジーがどんどん市場に出てきていて、IoTをはじめとした新しいマーケットをものにするには、今まで以上に通信も重要になるし、これまで存在しなかったような製品や技術も活用していかなければならない。そんな中でも、エンド・トゥ・エンドで必要なパーツをきちんとお届けするというのが、SB C&Sとしての重要な使命になると思っています。
Favorite Goods
自社が企画・製造・販売するスマートフォンアクセサリーの中で最も気に入っているのがバッテリー付きの手帳型ケースだ。薄型・軽量で安全性も高いセラミックバッテリーを採用。出張時も「これがあると非常に安心」だという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
DXでディストリビューターの重要性は増す
プロダクトの販売からサブスクリプション型のサービス提供にビジネスがシフトしたとしても、「ディストリビューターの役割はなくならない」と説く。デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するには、従来のようなバックオフィス中心のIT活用だけでは不十分。ITベンダー側には、新しいテクノロジーを活用して新しいビジネスを創ろうとするユーザーの取り組みを包括的に支援する役割が求められる。しかし、例えばSIerが完全に独力でそうした要請に応えるのはなかなか難しい。どんどん出てくる新しい技術を的確にサマライズして用途に合わせてレコメンドしてくれる存在=ディストリビューターの重要性は、むしろ増すと溝口氏は見ている。
社員がやりたいことをやれる、ワクワクする会社にしたいというのが、経営者としての行動の軸だという。「株主のため、お客様のため、パートナーのためとかいろいろ考えなければならないことはあるが、とにかく社員が元気でいろいろなことを考えてチャレンジしてくれるというのが、会社を一番強くする」と考えている。現場の社員がアイデアを出して、新しいビジネスを発想、実現できる環境をさらに充実させていく。自身のキャリアの中でも、ソフトバンクグループは「新しいことにチャレンジするチャンスをくれる会社という意味で一番の会社だと思っている」という。
プロフィール
溝口泰雄
(みぞぐち やすお)
1956年、長野県生まれ。同志社大学商学部卒業後、81年に諏訪精工舎(現セイコーエプソン)に入社。93年、日本IBMに。2000年、ソフトバンク・コマース(現ソフトバンク)に移り、01年に取締役に就いた。03年にソフトバンク・コマースと他3社の合併によりソフトバンクBB(15にソフトバンクが吸収合併)が発足後、06年、ソフトバンクBBのコマース&サービス統括に就任。07年、取締役常務執行役員。14年4月1日、ソフトバンクBBのコマース&サービス事業部門が分社・独立して誕生したソフトバンク コマース&サービスの代表取締役社長兼CEOに就任(現職)。現在はBBソフトサービスの代表取締役会長兼CEOも兼務している。
会社紹介
ソフトバンクBBからIT流通事業(コマース&サービス事業)部門が分社・独立し、2014年4月1日に発足。法人向けIT製品・サービスの大手ディストリビューターとして存在感を放つ。近年、スマートフォン用アクセサリーのメーカーとしてのビジネスも拡大している。