昨年来、RPAは法人向けIT市場でバズワード化し、多くのITベンダーがその提案に注力する状況が続いている。今年9月、グローバル市場におけるRPAソリューションの有力ベンダーの1社であるオートメーション・エニウェアの日本法人社長に、前日本オラクル社長の杉原博茂氏が就任した。杉原氏が見る、日本のRPA市場の課題と可能性、オートメーション・エニウェアの強みとは――。
AAJの現在地はRPA2.0
――週刊BCNのインタビューに応じていただくのは、日本オラクルの社長を務めておられた頃以来ですね。まずは前職を離れられた経緯からうかがってもよろしいですか。
米オラクル、日本オラクルを合わせてオラクルには4年1カ月在籍したことになります。データベースの会社からクラウドの会社への転換をグローバルで進めてきた時期でしたが、東証一部上場企業である日本オラクルは時価総額が2倍以上になりましたし、パートナー、お客様との関係も良くなったという手応えがあったので、次のステージに行くべきかなと考えたんです。
――その後のキャリアがオートメーション・エニウェア・ジャパン(AAJ)の社長というのは驚きでした。
昨年の11月末に日本オラクルの取締役会長も退任してからちょっと休憩を入れた後、渋谷のビットバレーに小さいオフィスを構えて、コンサル会社を立ち上げました。IPO直前のスタートアップのアドバイザーなどをやっていたんですが、その頃に、AI、RPAというキーワードに出会ったんです。
私はオラクル時代からずっと、「デジタルエイド」を掲げて、少子高齢化対策や地方創生を、クラウドを中心としたデジタルテクノロジーで支援していこうという施策を実行してきました。しかし、いまのIT基盤や既存の業務システムでは、人間が手掛ける業務の2割程度の範囲しか効率化できていないんです。残りの8割をどうすべきか。コンピューターがAIの力をもって人間を助けることができるのではないか。そこにAI、RPAの可能性があるということなんです。オラクルを辞めて以降、さまざまなお話を各方面からいただいたんですが、自分なりに市場のことをいろいろ勉強した上で、AAJに参画することを決めました。
――ただ、RPAソリューションのベンダーは多数ありますよね。
まず、オートメーション・エニウェアはRPAのツールベンダーではないんです。そこがまず他のRPA関連ソリューションのベンダーとは大きく違うところで、強調しておきたい点ですね。コンセプトはデジタル・ワークフォース、デジタル・レイバーの提供であり、デジタルな労働力を提供するという観点で圧倒的なロードマップがある。拡張現実をAR(Augmented Reality)と言いますが、われわれはこれから日本の社会でAHE(Augmented Human Enterprise)、つまり人の能力を拡張した企業や行政が出てくると思っているんです。オートメーション・エニウェアのロードマップはその実現を見据えています。
通常の基幹業務系システムなどによるコンピューター化を0としたときに、RPAで業務を自動化する世界はRPA1.0で、オートメーション・エニウェアは今2.0のところまで来ています。RPAによる業務の自動化にAIとアウトプットの分析という機能がくっついて初めて「デジタルレイバー」になるわけで、当社はその水準にあるということですね。さらに、既存のIT基盤との連携やスケーラビリティの面でも優れたものがあると思っています。これからの企業が考えなければならないのは、生身の人間とデジタルワーカーをどうマネジメントしながら生産性を上げていくかということでしょう。
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