新しいビジネスをITで創り出す動きが一段と加速する――。NTTデータの本間洋代表取締役社長は、2019年の情報サービスビジネスの方向性をこのように話す。NTT研究所の研究成果や世界の先端企業、スタートアップ企業の新技術を貪欲に取り入れ、ユーザー企業の新ビジネスの創出に役立てる。「新技術」を「新ビジネス」に結びつけることでビジネスの拡大につなげる考えだ。また、NTTグループの海外事業の再編が急ピッチで進んでいる。NTTデータはグローバルでトップクラスのSIerの地歩を固める絶好のチャンスと捉え、グループ連携を追い風に海外ビジネスの成長に一層弾みをつける。
ディスラプターとの競争に勝ち残る
――19年を迎えるに当たり、まずは情報サービス業界の向こう1年の見通しをお話ください。
私はITを「業務効率化」「顧客接点の強化」「新ビジネス創出」と大きく三つに分けて捉えています。まず、業務効率化は、いわゆる基幹系を中心とする伝統的なIT活用。近年では、業務自動化ソフトのRPAのビジネスが活況を呈すなどの変化が起きています。NTTグループが開発し、自社でも使ってきた国内トップクラスのシェアを誇るRPA「WinActor(ウィンアクター)」は、当社だけでも今年度に入ってすでに1500社の顧客から受注をいただいています。
二つめの顧客接点は、ソーシャルメディアをはじめとする新しい顧客チャネルに対応するため、避けて通れない領域。企業間取引(B2B)においても、例えば金融サービスのFinTechも有力な顧客接点になり得ますし、ブロックチェーンは新しい取引チャネルとして有効である期待されています。当社が事務局を担当している貿易金融のコンソーシアムでは、海運会社や銀行、保険会社、商社、輸出入会社などの取引をブロックチェーンで結ぶ貿易情報連携基盤の実現を目指しています。
三つめのITを活用して新ビジネス創出につなげる領域は、少なくとも18年までは、あまり大きな商談にはなりませんでした。ただ、19年は大きく伸びる余地があります。
――新ビジネスの創出では、どのあたりに課題がありますか。
ユーザー企業の投資意欲は着実に高まっています。ITを駆使して既存のビジネスを打ち壊すデジタル・ディスラプターが台頭するとの危機感を持つユーザー企業も少なくありません。課題はユーザーのビジネスのデジタル化と、そのデジタル化を実現する技術を当社をはじめとするSIerが適切に結びつけられるかどうかにあります。ユーザーが属する業界の競争状況やエコシステムを理解する力量と、最新技術の両方があってはじめてITによる価値創造が成立します。
SIerという業態は利用技術には長けていますが、先端技術そのものを開発できるわけではありません。そこで、NTTグループの研究所の研究成果や、世界の優れたベンダーやスタートアップ企業の技術を貪欲に取り入れます。同領域におけるユーザー企業の投資意欲も高まっていますので、この潮流に乗って商談規模を拡大。ユーザー企業がデジタル・ディスラプターとの競争に勝ち残れるよう、ともに力を合わせていきたい。
海外ビジネスの成長に一層弾み
――NTTグループの海外事業は、大きく再編します。海外事業を統括する中間持ち株会社の下に、NTTコミュニケーションズとディメンションデータを再編する形で、海外事業会社と国内事業会社を19年7月をめどに発足させると聞いています。
NTTデータは現在の経営形態のまま各事業会社と連携し、株式上場を維持するのですが、海外事業会社が集約されますので、よりスムーズな連携が期待できます。これまでもNTTコムとディメンションデータとは、世界各地のプロジェクトで密接に連携してきましたが、SIやクラウド、ネットワークといった各社の商材やサービス名称にバラツキがあり、ユーザー企業から見て、正直、分かりにくいところがあったと反省しています。今回の再編を通じて、NTTグループとしての商材の整合性を図り、ユーザーから見て分かりやすいサービス体系にしていきたい。
事業会社の再編に先立って、18年11月にグローバルイノベーションファンドとグローバル調達会社を新設しています。海外スタートアップへの投資を通じて、先端技術をいち早く手に入れたり、NTTグループの調達を一本化することで、メーカーに対する価格交渉力を高められる。特にグローバルで調達を一本化することは、コスト削減効果が出やすい施策だと捉えています。
――NTT持ち株会社では、一連の海外事業の再編をテコに海外売上高を直近の約2兆2000億円から23年度に2兆7500億円に増やしていく目標を掲げています。NTTデータとしてはどうイメージしていますか。
今年度(19年3月期)までの3カ年の中期経営計画で連結売上高2兆円、国内と海外の売上構成比をおおむね半々にする目標を掲げてきました。デルの旧サービス事業部門を16年に譲り受けたこともあって、この目標に近いところに着地できる見込みです。当社では、これを「グローバル第二ステージ」と位置付けており、19年度以降は次のフェーズである「グローバル第三ステージ」へとステップアップしていきます。
このグローバル第三ステージでは、進出先の国や地域でSIerトップ集団に着実に入っていくこと。信頼されるブランドとして定着することなどを掲げています。そのためには、25年頃をめどに連結売上高でおおよそ2.5兆円か3兆円くらいの規模が必要になってくるでしょう。売上構成比は「EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)/中南米」と「日本・APAC(アジア太平洋地域)」「北米」を三等分して、主要市場でバランスよく売り上げを伸ばしていくことをイメージしています。
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