ネットワンシステムズの子会社で、ディストリビューション事業を手掛けるネットワンパートナーズは昨年11月、設立10周年を迎えた。この節目となる年に3代目社長に就任したのが田中拓也氏だ。10年間の取り組みを振り返りつつ、田中新社長が切り開こうとしている新たな10年のロードマップを聞いた。
マインドセットの改革
――昨年11月に、10周年を迎えました。10年前と比べて、大きく変わった点はどこでしょうか。
会社設立当時は社員数が60人、売上高は60億円ほどでしたが、今は150人、300億円が見えるところまで成長しました。社員数は2.5倍に増えたのに対して、売上高は5倍に増えています。これは生産性を高めることで、社員一人当たりの収益を高めることができたからです。社員の実力が着々とついてきている証拠です。
さらに経営戦略を変えています。これまでの方針は売上高にフォーカスしていましたが、今は利益重視に変えました。とはいえ、急には変わりません。2~3年の助走期間を経て、徐々に社員の意識から変えていきました。
――社員を育てるために、どのような教育を行ったのでしょうか。
2017年頃から社員教育を強化しています。中核は中堅社員です。社員の年齢構成を見ると、若い社員とベテラン社員の割合が高い一方、中間層が薄くなっていて、今の世代を担い、また今後若手を導いていく中堅社員の教育を重視しています。社員教育というと、外部から講師を招くケースが多いと思いますが、当社では社員が講師を務めています。
ベテラン社員は、転職という形で入社しているため、前職のノウハウを持っています。このノウハウを教育担当者と相談しながら、当社に合う形に整え、展開しています。こうした教育を受けた中堅社員が今、めきめきと実力をつけています。今後は都度アップグレードさせていきたいと考えています。
また、当社は直接販売をしていません。つまり、お客様としてお付き合いをしている方々の先にエンドユーザーがいるわけです。目の前のお客様ばかり見ていると、エンドユーザーが見えにくくなってしまいます。そうならないためにも業種、業界、市場、エンドユーザーの特性や動きを把握する必要があります。グループ会社であるネットワンシステムズは、エンドユーザーをお客様としていますので情報を共有するため、お互い行き来する体制を取り入れたいと考えています。19年度から開始予定で、着々と準備を進めています。
――社員のマインドが変わった次のステップとして、組織体制の変更もあるのでしょうか。
そうですね、営業とエンジニアの垣根を低くしたいと考えています。エンジニアにもセールスマインドを持ってもらい、営業として活動してほしいと考えています。とはいえ、個人の特性や向き不向きもあります。社員の特性を見ながら、お客様対応ができるエンジニアにはどんどん営業の仕事をしてもらいたい。そして、営業職、技術職という垣根を取り払い、みんなが一丸となってセールス活動するチームにしていきたいと考えています。技術的なナレッジを持つ営業、セールスマインドを持つエンジニアを抱える、多様性のある組織がいいと思っています。
社長が起こす変革
――設立10周年の節目となる年に就任されました。田中社長のミッションを教えてください。
グループ全体として、世代交代が大きな課題になっています。同じ人物が長年経営者を務めるほうがいい企業もありますし、人を代えることで効果が出る企業もあります。当社の場合、10年という節目でギアを変える必要があったので、社長を交代したと考えてます。
ネットワンパートナーズは、ユニークな企業でありたいと考えています。そもそもネットワンシステムズから分かれたのは、これまでと異なるアプローチをするためです。そのために、社員を規制やルールでしばるのではなく、社員の思いに賛同していくことだと思います。社員が生き生きと働き、やりたいように進めることで、これまでのネットワンパートナーズとは全然違うキーワードが出てくるでしょう。
一方、私たち経営陣は先を見据えて、どういうソリューションを市場に展開していくか、パートナーモデルをどう変えていくか、そうしたことを考えなければいけませんね。
――ユニークな企業であり続けるために、どのような課題がありますか。
まだまだ属人的な仕事しかできていないと感じており、それを改善していきたいと考えています。仕事を進める上で、やはり人が大事だ、と思います。もちろん、それは重要ではありますが、弱点でもあります。その「人」が辞めていった時、どうするのか。途切れることなく、次の世代にちゃんとバトンタッチできるような人間関係をつくっていかなくてはいけません。
それと同時にオートメーション化を導入していきます。自動化できる領域は、属人化せず、次の世代に引き継げる領域です。一方、感情が入る領域は引き続き人が担当する領域なので、しっかり引き継いでいく必要があります。
私の次の社長が就任したときに、同じようにユニークな企業であり続けるために、属人化の一部脱却、自動化・ロボティクス化の導入を私の代できっちりやり、次の社長に渡したいと考えています。
[次のページ]市場に新たな価値を提供する