固定資産システムを中心とした総合資産管理ソリューション専業ベンダーであるプロシップの成長戦略が新たなステージに入った。2019年1月に国際財務報告基準の新リース会計基準(IFRS16)が適用される中、4月に新たに就任した山口法弘社長は、ソリューションのカバー範囲の拡大と新規顧客層の開拓に乗り出す。
ビジネス環境は良好
IFRS対応が追い風に
――社長就任を発表されたのが19年の2月で、実際にご就任されたのが4月ということで1年弱経過したことになります。この1年を振り返ってみていかがですか。
手応えとしてはかなりいいと感じています。当社は固定資産の管理システムを中心にビジネスを展開していますが、ここ3、4年はIFRSを適用しようとしている企業が国内でかなり増えております。そういった企業がシステムを刷新する際に固定資産の観点でのニーズを捉えることができました。
そのほか、19年1月からIFRSの新しいリース基準(IFRS16号)が強制適用されることになったのも特需的なニーズにつながっており、17年1月にリリースしたIFRS16対応固定資産システムへの載せ替えの活動も順調に進んでいます。また、社会インフラ業界にビジネスの統廃合の動きがあり、そこでのシステム刷新ニーズが増えています。
IFRSを適用していく企業を取り込んでいくことには、大きな意義があると考えており、今後も増えていくと見込んでいます。現在、適用しているのが200社、今後適用することを表明しているのが300~400社近くある状況です。こういった企業は海外で事業を展開しているかその予定があるケースが多く、例えば連結決算に対応したシステムを作ることで一つの契約で100社近い導入が実現できることもあります。結果として、当社の「ProPlusシリーズ」は、全体の累計で約4800社にご利用いただくことができました。
今後もグローバル規模で新規開拓を進め、新たな顧客基盤として取り込んでいきたいと考えています。
――固定資産管理というと大きなERP製品の1機能として組み込まれていることも多いですが、プロシップの特化型ソリューションがこれだけ支持されているのはなぜなのでしょうか。
やはり日本企業のニーズに添っていることが大きいのではないでしょうか。われわれが得意としている大企業では外資系のERPを導入されている企業が多いのですが、日本固有の会計制度や税務に対応していません。そうしたERPユーザーは追加投資を行い個別でカスタマイズしたり、人海戦術でシステムの外で対応したりしています。ERPは非常に巨大でいろいろな面で優秀ではあるのですが、ある程度企業規模が大きくなると固定資産管理の業務が煩雑になってきますので、操作性の悪さが効率に直結してしまいます。そういったところに満たされないニーズがあり、われわれの製品を選んでいただけると考えています。
ターゲットは大企業
開拓余地はたくさんある
――これまでは大企業をターゲットとして事業をされてきていますが、中堅中小企業についても同じく固定資産管理のニーズはありますよね。
これについては社内でよく議論を行っています。確かに現在の中堅中小企業の市場は全体的に景気が良く、システム投資が盛んだと感じていますが、われわれは戦略的にこの領域には進出しないと決めております。それは決定的にニーズが違うという考え方からきています。
固定資産管理で大企業が求める要件と中小企業が求めるそれは違いますし、両者のビジネスモデルも大きく異なります。いま大企業向けに展開している製品を単純に価格を下げて提供するだけでは、うまくいくとは思っていません。現時点で私たちが得意としている領域にはまだ開拓できる余地がありますから、まずはそこに集中していこうと考えています。
――その開拓できる余地についてどのように攻めていかれますか。
ここについては二つの観点があります。一つは当社のソリューションの「バリューの再定義」がカギになります。具体的に申し上げますと、これまで固定資産管理ソリューションというと減価償却の計算を中心としたソフトやサービスを提供することを指していました。幸いこの領域では業界でもトップクラスのシェアを獲得することができています。一方で、この固定資産管理という業務の周辺には現物管理や土地管理、設備管理といったパッケージシステムになっていない領域がたくさん残っています。今後は、固定資産管理を軸にその周辺業務まで製品ポートフォリオを拡充し、パッケージのバリューを底上げしていきます。最終的には企業の資産を包括的に管理し、ROAを向上させるようなソリューション群へと成長させていきたいと考えています。
もう一つ、現在取り組んでいるのが、これまでパッケージシステムが適合しないと思われていた領域への進出で、中でも最も注力しているのが電力やガス、鉄道、通信など「社会インフラ」と呼ばれる業種です。こういった企業は他の企業と明らかにビジネスモデルが異なるほか、設備の件数が圧倒的に多かったり、業界ごとに個別の法律があるためパッケージが存在しません。少なくとも私たちが調べた範囲では固定資産のパッケージはありませんでした。
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