セルフサービスBIツールでビジネスを伸ばしてきた米クリック・テクノロジーズは近年、M&Aによるポートフォリオ拡大に注力し、「データアナリティクスプラットフォーム」の提供を果たした。昨年10月、日本法人クリックテック・ジャパンのカントリーマネージャーとして就任した今井浩氏は、現在の姿を「新生クリック」と表現。データ分析・活用の需要が高まる日本国内でビジネスをけん引していく。
生まれ変わったクリック
――昨年10月、クリックテック・ジャパンのカントリーマネージャーに就任されました。次のキャリアの場としてクリックを選んだ理由は何だったのでしょうか。
クリックにやってくる前までは、Dell EMCでデータ保護ソリューションという、データを守る製品事業のトップを務めていたのですが、やはりどうしても「守り」ばかりのメッセージになってしまうと当初から感じていました。確かに守ることはビジネス継続性やセキュリティの観点で重要なキーワードではあるのですが、ビジネスにおいては「攻め」と「守り」の施策の両方のバランスが大切。攻めの施策で何か直接的にソリューションやテクノロジーで支援できるベンダーはないかと考えていたときに、注目したのがクリックをはじめとするデータアナリティクスのベンダーでした。
その中でもクリックに入りたくて入ったポイントが「テクノロジー」です。実はクリックは、ここ数年で大きく生まれ変わっているんです。そこに魅せられたというのが大きな決め手でした。
――生まれ変わったというのは、どういうことでしょうか。
大きく二つの点があります。一つが、AIを取り入れたことです。当社は「QlikView」という、いわゆる「セルフサービスBI」で伸びた会社ですが、そこにAIのパワーを搭載しました。私は「お節介BI」と呼んだりしていますが、AIが「あなたはこういう分析がしたいのではないですか」などとリコメンドします。これにより「データリテラシー」という言葉すら知らないようなビジネスの最前線にいる担当の方でも、簡単に使いことができるだけでなく、過去のデータを分析し未来も予測できるようになりました。これが「Qlik Sense」と呼ばれる、QlikViewの後継製品の位置付けにある製品です。
――もう一つは何でしょうか。
ポートフォリオを拡大していることです。2018年にデータカタログ製品のPodium Data(ポディアムデータ)を買収し、「Qlik Data Catalyst」として提供しています。また19年にはデータインテグレーション機能を提供するAttunity(アチュニティ)を買収し、データ統合プラットフォームとしてリブランドしました。
企業内外のデータを棚卸ししてカタログ化するのがData Catalystで、その裏で自由に社内外を問わずデータをリアルタイムに持ってくるのがデータ統合製品です。それを従来のBIツールと連動させることで、今では統合的な「データアナリティクスプラットフォーム」のべンダーに生まれ変わりました。
Qlik Senseと、先ほどの旧Attunityのデータインテグレーション製品、Data Catalystが連動することで、エンドユーザーがAIのパワーを活用しながら自由に分析が可能になります。こうした三つのポートフォリオをトータルで製品・テクノロジーとして持っているのはクリックしかいません。私がテクノロジーの面でクリックを選んだ理由もここにあります。
データリテラシーを高める
――「2025年の崖」で話題になったように、データ活用・分析の機運が高まってきています。BIベンダーの御社には追い風といえそうですが、課題などはありますか。
日本のデータリテラシーの低さです。個人や組織がデータを理解してビジネスに生かす能力をデータリテラシーと呼んでいますが、それがグローバルの平均と比べて日本は低いんです。例えば、データリテラシーが低いために1.6兆円のビジネスポテンシャルをロスしている可能性があるという調査結果もあります。そこが日本固有のチャレンジングポイントだと思っています。
――先ほど、クリック製品は「データリテラシーという言葉すら知らない」ユーザーでも使えるというお話がありましたが、今後のビジネスとリテラシーはどのように関連するのでしょうか。
今ではBIツールとは何かを問う人はあまりいなくても、うまく使いこなせないという人は多いと思います。それはベンダー側の責任もありますが、ユーザー側の使いこなす能力や、評価するプロセス・文化が足りていないということもあるため、当社では、データリテラシーを重要施策の一つと位置付けています。
当社のツールは、AIのパワーで人間が気づかないようなことをどんどんリコメンドしていきます。結果としてユーザー側のリテラシーが上がったのと同じ結果をもたらすことになります。ユーザーに統計学やデータ分析のプロになれということは言いません。当社のテクノロジーがそれをお手伝いできるので、私はあえて「データリテラシーを上げましょう」ということをお伝えしていきたい。
また、インテグレーションの部分にもキーワードがあります。エンドユーザーにデータ分析ジャーニーをどんどん加速してもらいたいわけですが、そのデータ自体は後ろで本社がセキュリティとガバナンス、そしてリアルタイム性をもって提供すべきです。先ほどお話したデータ統合製品とカタログ製品は、エンドユーザーに対し、リアルタイム性、セキュリティ、ガバナンス、この三つを担保します。こうしたユニークなテクノロジーの下支えがあってはじめてリテラシーが上がる環境が整うと思っています。また、テクノロジーだけではなく、人材や意思決定プロセスの面からデータリテラシーの向上を支援する「Data Literacy as a Service」といったサービスも展開しています。
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