コロナ禍でSaaSアプリケーションの需要が大きく高まった。2017年から日本語版が提供されているビジネスチャットツール「Slack」もその一つで、スラック・ジャパンの佐々木聖治日本法人代表は、グローバルの状況について「普通に活動していたら、想像できないような成長率になっている」と話す。一方で、国内ユーザーからの期待の高まりも感じており「期待を裏切らず、超えていきたい」と意気込む。グローバルで2位の日間アクティブユーザーを抱える日本市場の戦略などについて、佐々木日本法人代表に聞いた。
SaaSアプリの需要増が
Slackの価値を高める
――日本法人代表となってから2年半がたちました。まずはこれまでの日本での取り組みについて教えてください。
私は18年2月に着任しました。昨年4月に東京オフィスを移転させたほか、同年11月には新たに大阪にオフィスを構えました。そして今年3月から、日本のお客様向けに国内のデータセンターの提供を開始しました。振り返ってみると、矢継ぎ早にマイルストーンを踏んできたと感じています。
――日本語版は17年11月から提供していますが、どのような経緯があったのでしょうか。
実は日本企業の利用は14年ごろからありました。当時はシリコンバレー界隈や北米に進出する企業の方などが使っており、われわれの本社である米スラック・テクノロジーズは、日本企業のユーザーがじわじわ増えていることは早い段階から確認していました。そのため、日本企業の声を反映し、北米以外の地域ではかなり早い段階の17年11月に日本語バージョンをリリースしました。
――日本でのユーザーの動向を教えてください。
最初はITやゲームなどのテクノロジー系の企業での利用が多くなっていましたが、今は製造やメディア、小売り、学術系研究機関、金融機関など、幅広い業種や業態の顧客に利用していただいており、非IT企業の採用が6割以上となっています。グローバルの日間アクティブユーザーは1200万人以上で、日本の日間アクティブユーザーは100万人以上。日本の数字は北米に次ぐ世界2位となっています。
――Slackの強みについては、どのようにお考えでしょうか。
三つのポイントがあります。まず一つめは、メールを置き換えることができる点です。Slackでは、メールの受信トレイの中で閉じてしまうものをオープンにしながら、テーマや部門、プロジェクトごとのチャンネル内でコミュニケーションをとることができます。また、Slackを使っているユーザー同士であれば、同じチャンネルを通じてコミュニケーションのネットワークを外部に広げることも可能で、これは他のビジネスチャットツールと比べた場合の大きな差異化要因となります。
二つめは、プラットフォームとしての拡張性の高さです。グローバルでは、2300を超えるSaaSアプリと連携できるため、Slackを起点にアプリを連携させ、さまざまな業務プロセスを進めることができます。
最後はセキュリティの高さです。米国の政府機関で採用可能であることを示す「FedRAMP(フェドランプ)」など、さまざまな認証に対応しているので、機密性の高い情報を扱う企業でも利用することが可能になっています。
――新型コロナウイルスの感染が拡大し、日本でのビジネスにはどのような変化が出ていますか。
Slackのプラットフォームとしての価値をより認識してもらえるようになったと感じています。企業がSaaSアプリを採用すればするほど、業務が煩雑になる傾向があり、散在するアプリの中から必要なアプリを探すために十数分かかるという統計もあります。一方、Slackを採用すれば、Slack上でアプリを起動させたり、通知を出したりすることが可能になります。われわれとしては、SaaSアプリの需要が高まれば高まるほど、それと連動してSlackの価値が上がっていくと考えています。グローバルの数字になりますが、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降の2月から3月の間に、新規の有料ユーザーは9000社増え、直前の四半期(昨年11月~今年1月)と比較すると80%の伸びとなりました。普通に活動していたら、想像できないような成長率で、日本の企業も同じような反応を示しています。
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