パートナーにも
変化を感じてもらう
――日本の市場では、どのようなことに投資をしていますか。
この3、4年、働き方改革が日本政府のアジェンダになっています。われわれが第三者機関と調査したとろ、自社の生産性が高いと感じていない人の割合は、日本はグローバルの4倍以上という結果になりました。日本企業が課題として認識している生産性の向上をいかに支援するかが大きなテーマになっています。どういう形でSlackを使い、生産性を高めていくか、また競争力を失わずに活動できるかといった部分について、Slackに対するユーザーの期待は高まっていると考えています。日本は優先度の高いティアワン(Tier 1、最上位)カントリーとして本社も見ているので、人や体制の強化に積極的に投資し、企業との接点を強化することを進めています。
――日本で導入を広げるためには、パートナーが重要になってくると思いますが、パートナー戦略についてはどのような方針でしょうか。
パートナープログラムは二つあります。一つは昨年スタートした「サービスパートナープログラム」です。これは、Slackを導入する際のシステム連携やコンサルティングといった部分をパートナーに手伝ってもらうもので、SI的なエッセンスがあります。日本では現在、2社がパートナーとして活動を始めています。もう一つは「テクノロジーパートナープログラム」です。こちらはSaaSアプリベンダーにSlackとの連携性をつくってもらうことを目的にしています。すでに100社を超えるベンダーが登録しています。
Slackを社内に正しく浸透させて、毎日使ってもらうためには、パートナー自身にも使ってもらい、変化を感じてもらう必要があります。われわれは、パートナーが自社で取り組んだことを他の企業に展開してもらいたいと思っています。パートナーを増やすことはもちろんですが、単に数に重きを置くのではなく、パートナーになり得る企業に、まずはSlackを体験してもらうことに力を入れています。
――日本市場での計画や今後の目標を聞かせてください。
コロナ禍で在宅勤務などのリモートワークの割合が増えました。われわれとしては、リモートワークとオフィスワークの両立を考えている顧客のお手伝いをすることが重要だと思っているので、ノウハウや事例を紹介する機会を増やしていくことを計画しています。
あとはユーザー同士のコミュニティーですね。ユーザーが定期的に集まり、自社の経験などを共有できる機会をつくって、使い方に関する成熟度を上げていきたいと考えています。既につながりは生まれてきているので、この輪をどんどん広げていきます。
最終的には、国内のあらゆる企業や組織が、よりシンプルかつ快適で、有意義に業務を進めていただけるような世界の実現を目指していきます。おかげさまでやるべきことはできていますが、まだ100点満点ではありません。ユーザーの期待を裏切らず、超えることを目標として、Slackが日本の中心になれるように、いろいろなことを一歩一歩確実に進めていくつもりです。
Favorite
Goods
会社のロゴの色をあしらったノベルティの靴下。「足元が明るくなるし、履き心地もいい」点がお気に入り。公私にわたって“勝負靴下”として愛用中で、「リモートでも、大事な場面では着用している。履くと気持ちが変わる」。
眼光紙背 ~取材を終えて~
リスクを恐れずにチャレンジを
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めないといけないという危機感は、企業の間で以前からあったが、突然やってきたウイルスとの戦いは「企業のDXに対する意識を非常に高めた」とスラック・ジャパンの佐々木聖治日本法人代表はみる。
コロナ禍で働き方は大きく変わった。昨年、東京オフィスの移転と大阪オフィスを新設したスラック・ジャパンも、グローバルの各拠点とともにビジネスチャットツール「Slack」を“本社”にした働き方を続けている。
デジタルの力で多くの企業のコミュニケーションを後押ししている。しかし、デジタル一辺倒になることがDXとは思っておらず、コロナ後を見据えて「リモートワークとオフィスワークの共存を考える必要が出てきた」とも考えている。
「変えるにはリスクが伴う。変えなければもっと大きなリスクが伴う」。計6回の宇宙飛行を行った米国の宇宙飛行士、ジョン・ヤング氏(2018年に死去)の言葉が座右の銘。多くの企業がDXに取り組む今こそ、「リスクを恐れずにチャレンジすることが大事だ」と説く。
プロフィール
佐々木聖治
(ささき せいじ)
米サクセスファクターズの日本法人社長を経て、SAPジャパン人事人財ソリューション事業統括本部長として日本市場でSAP SuccessFactorsビジネスの急成長を牽引。米セールスフォース・ドット・コム日本法人のエンタープライズビジネス部門の戦略アカウントマネジャーとして営業の経験も有する。2018年2月から現職。米ワシントン大学で国際経営学の学士号を取得。愛知県出身。
会社紹介
ビジネスチャットツール「Slack」を提供する米スラック・テクノロジーズ(2009年設立)の日本法人。17年7月に設立し、同年11月から日本語版のサービスを提供している。19年4月に東京オフィスを移転し、同年11月に大阪オフィスを新設。20年3月には国内データセンターの提供を開始した。米本社は19年6月にニューヨーク証券取引所に上場している。