診療所の医用画像分野に強み
――メーカーであるコニカミノルタの強みと、コニカミノルタジャパンが培ってきた業務改革のノウハウを組み合わせることで、独自の価値を生み出すわけですね。
そうです。「デジタルワークプレイス」「現場のDX」と話してきましたが、これに続いて「ヘルスケア」分野を三つめの事業の柱に育てていく方針です。当社グループはX線、超音波関連の機器に強みがあり、例えばX線による動画解析技術を使うことで、呼吸や血管拍動といった肺の重要機能を可視化できます。さらにこれら機器の小型化の技術にも長けていることから、大型機材の設置スペースを確保しにくい診療所からも高い評価を得ています。
全国に約10万の診療所があるのですが、うちX線機材を設置している診療所がおよそ5万で、その中の2万余りの診療所で当社のX線機材を使っていただいています。技術的にはこれらの機材をネットワークでつなぎ、地域の中核病院と画像や動画を共有することで、病診連携をよりスムーズにするといったこともできる。ライバル他社が大規模病院を主戦場とするのに対して、当社は診療所に焦点を当て、病院とのネットワーク化に取り込むことで地域医療市場におけるビジネスを着実に伸ばしていきます。
――介護分野ではどうでしょうか。
介護では持ち前のセンサー技術を応用し、利用者の居室内にマイクロ波センサーを設置。利用者の呼吸状態を検知し、異常があった場合はすぐに介護職員が駆けつけられる商材を開発しています。また、行動分析センサーによって居室内の普段の行動を分析し、転倒などの異変を即座に介護職員に通知します。介護職員の人手が限られる中、できる限り職員の負担を減らしつつ、サービス品質を向上させ、生産性を高めるビジネスに力を入れています。
――コロナ禍によって既存ビジネスの事業環境の変化に拍車がかかっている印象ですが、御社のビジネスはどのように変えていきますか。
直近の当社コニカミノルタジャパンの売上構成比を見ると、冒頭に触れたように複合機を中心とするビジネス機器関連が半分弱、次いでヘルスケア関連事業が大きく、現場のDXを含むITサービス関連が続くイメージです。ヘルスケアとITサービスの伸び率が大きいことから、向こう5年でほぼ等分になると見ています。
とはいえ、主力サービスの一つの「いいじかん設計」は、働き方改革全般に関わりますので、オフィスや現場の仕事を問わず、複数の事業セグメントをまたいでいるのです。市場の変化に合わせて、既存の事業セグメントそのものを見直していく必要があるのかもしれません。ビジネスをダイナミックに変化させ、成長につなげていきます。
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Goods
「欧米では、使っているペンで人柄を推し量る傾向がある」と前任者からの申し送りがあり、海外赴任をきっかけにモンブランのボールペンを使うようになった。青色は少し太くてサイン用、黒色はメモ書き用として愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
デジタルは「人の思い」を支える
大須賀社長は、ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)に入社してから実に累計18年もの長きにわたって海外で勤務してきた。11回の大陸間の引っ越しを経験し、出張などを含めて60カ国に滞在、訪問した経験を持つ。欧州時代の約15年間におよそ50件のM&A(企業の合併と買収)を取りまとめるなど海外ビジネスに精通してきた。
コロナ禍の半年余りで世界はどう変わったのかを聞いたところ、「ITの側面を見ると、リモートワークに伴う業務プロセスのデジタル化やオンライン商談、デジタルマーケティングの需要が高まった」と見る。とりわけ、紙やハンコが多く残り、欧米に比べてデジタル化が遅れていると指摘されることが多い国内の業務プロセスは、コロナ禍をきっかけにデジタル化が加速すると見ている。
一方で、親に会いに行けない、友だちと一緒に食事ができないといった制限が長く続けば続くほど、「社会の破滅をもたらす重大危機になりえる」とも。人との触れあいが、いとおしいと感じるようになり、これまでにも増して大切にするようになる。「デジタルはそうした人の思いを支える重要な役割を担っていく」と話す。
プロフィール
大須賀健
(おおすが けん)
1963年、愛知県生まれ。85年、大阪市立大学経済学部卒業。同年、ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)入社。国内外の事業会社で企画・営業・経営に携わる。2011年から3年間、欧州販社社長を務める。13年、コニカミノルタ執行役に就任。14年に帰国しCFO(最高財務責任者)を担当した後、16年に情報機器事業の事業統括部門を担当。19年、コニカミノルタジャパン副社長。20年4月1日付で社長に就任。
会社紹介
コニカミノルタジャパンは、コニカミノルタグループの国内事業会社。キンコーズ・ジャパンのオンデマンド印刷事業や、先端医療の個別化医療、遺伝子検査などの一部の事業を除いて、コニカミノルタグループが手がける事業全般の国内展開を担う。ワークプレイスや現場作業のデジタル化、ヘルスケア分野で独自の強みを持つ。従業員数は約3300人。