関西電力グループのオプテージは固定光166万回線、携帯電話の無線122万回線の巨大なネットワークを構築・運用するノウハウと、旧関電システムソリューションズの外販部門などを企業向けシステム構築(SI)事業を統合して設立された。アクセス回線から基幹業務システムまでワンストップで提供できる希有な存在として競争優位性を高めていく。今年9月にはストレージサービス「Neutrix Cloud」をスタート。社会インフラを担う企業グループとして、ユーザー企業の価値向上に直結するデータに焦点を当てたサービス提供に乗り出している。
企業のデータ保管の在り方に着目
――旧関電システムソリューションズの外販部門などをオプテージに移管し、企業向けビジネスを大幅に増強して2年目に入ります。どのような変化がありましたか。
当社は旧ケイ・オプティコム時代から固定光回線サービスの「eo光 (イオひかり)」や、格安SIMサービス「mineo(マイネオ)」を手がけていることから、個人向けの通信サービスの会社というイメージが強いのではないでしょうか。2019年4月に旧関電システムソリューションズの外販部門や、親会社の関西電力の社内情報ネットワーク構築部門などを統合し、今のオプテージの新体制となってからは、情報ネットワーク基盤から業務アプリケーション、情報セキュリティ、ITコンサルティングまで一貫して提供できる会社となりました。
eo光は166万世帯、mineoは122万回線のユーザー数があります。これだけの規模のネットワーク基盤を運用でき、かつ強力なSIの能力を有しているITサービスベンダーは珍しい。今年度(2021年3月期)に入ってからは、営業部門とSE部門の連携を一段と強化するなどしてサービスの統合化を推し進めています。
コロナ禍でネットワークやクラウドを駆使したリモートワークの需要が一段と高まる中、ネットワークとSI、サービスをワンストップで提供できる当社の特色は、他のSIerに対しての競争優位性を高めるのに非常に有利に働くと自負しています。
――今年9月に、米国やイスラエルに本社を置くインフィニダットの技術を導入して、クラウド型のストレージサービスを発表していますが、狙いは何ですか。
クラウド分野の事業を強化するに当たり、当社の強みをどのように生かすべきか考えたとき、「データの保管」に着目しました。企業にとって「データ」の資産的な価値は、年々高まっています。砕けた言い方になってしまいますが、業務アプリケーションはオンブレミスだろうが、クラウドだろうがどこに置いても問題になりません。ただ、データだけはできる限り安全で、ベンダーロックインされない場所に保管すべきです。
そこで、当社が長年にわたってデータセンターやネットワークの基盤を運用してきた強みと、インフィニダットのストレージ技術を組み合わせたストレージサービスを国内で始めました。サービスの名称は、インフィニダットが世界各国で展開している「Neutrix Cloud(ニュートリックスクラウド)」で、当社が運営する大阪と東京の2カ所のデータセンターを使って独占的に提供します。この事業を専門に手がける子会社Neutrix Cloud Japanも当社が100%出資するかたちで立ち上げました。
行動変容で光固定が再評価される
――確かに、過去を振り返ると、メインフレーム時代はCPUと記憶装置が同一ベンダーで一体的に運用されていましたが、その後、ストレージのマルチベンダー化が進み、サーバーとの切り離しが進みました。
クラウド時代になっても同じで、例えば特定のパブリッククラウドに業務アプリもデータも全部いっしょに入れるのではなく、分けて運用したほうが、ベンダーロックインを遠ざけるだけでなく、災害時のデータ保護、事業継続の観点からも優れています。
クラウドやアプリケーションは日々進化し、変化が早い。企業経営にとって、こうしたクラウド側にある先進的な技術をいち早く取り入れることが競争力を高める上でとても重要です。その一方で、データは企業が所有する重要な資産であり、変化よりも信頼性が重視される。当社は社会インフラを支える企業グループとして、ユーザー企業のデータをしっかりと守り、運用できる能力に長けています。先進技術とデータ保全の信頼性を両立させるのが、今回のNeutrix Cloud事業の狙いです。
――2020年を振り返るとコロナ禍をきっかけに社会的な行動変容が起きました。御社のビジネスにどのような影響がありましたか。
在宅勤務が増えたことで固定光のeo光が再評価されるようになりました。家庭向け光回線は成熟しつつある市場で、価格だけの競争になりがちです。ところがコロナ禍で、オンライン会議やオンライン授業が半ば強制的に行われるようになり、安定して品質のよい光回線が重視されるようになりました。ビデオ会議中にブチブチ切れたら文字通り話になりませんからね。数字にも表れており、この上期(20年4-9月)のeo光の解約数は前年同期比で2割くらい減っています。
eo光では、「長く使ってもらう」「客単価をあげる」「人に勧めたいサービス」といった指標で、常に上位クラスに入るよう努めてきました。客単価のアップの指標に関して言えば、ネット接続だけではなく、eo光テレビやeo光電話、定額ストリーミング動画などの商材も拡充しています。今年は家にいる時間が増えたことから、当社が取り扱っている動画配信のHuluの上期の契約者数が前年同期で実に3倍近く増えました。
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