「B2E」の領域でも強みを生かす
――個人の生活スタイルの変化が如実に分かる数字ですね。企業向けのビジネスでも、今後、このような変化が続くとお考えですか。
コロナ禍で一気に普及したリモートワークは、働き方改革の文脈と相まって元に戻るとは考えにくいですね。当社も半分程度の出社率を目安にリモートワークを継続中です。ただ、リモートワークは定着化しつつも、じゃあ、都心のオフィスが完全に要らなくなるのかと言えば、そうはならないでしょう。部門を跨いで根回しをしたり、みんなで連携して隙間なくバリューチェーンの品質を保とうと努力したりと、メンバーシップ型の日本の会社組織ならではの力強さがあります。このよさを生かしながら、対面とオンラインで仕事のバランスをとっていくことになると思います。
おそらく多くのユーザー企業も同様で、リモートワークを生かした働き方改革、業務の完全オンライン化を推進しつつも、人と人が対面でコミュニケーションを図りながら、方向性をすり合わせて、共に新しい価値をつくり出していく共創型の組織に向かうとみています。当社は持ち前の通信ネットワークやIT基盤、業務アプリケーションの強みを総動員し、コロナ後の行動変容に対応した情報システムづくりを支援していきます。
――これまでは会社で使っている通信ネットワークと自宅とは完全に切り離されていましたが、リモートワークの定着化で境界が曖昧になりそうです。現に多くの方がeo光を仕事で使っています。
「B2E（企業とその従業員向け）」のビジネスは、有望であり当社の強みを生かせる分野だとみています。企業の情報セキュリティをしっかり担保しつつ、業務の完全デジタル化と、リモートワーク先の従業員とをつなぐネットワークをエンドツーエンドで当社は構築できる。有線であれば安定した品質のeo光、無線ではコスト競争力のあるmineoをシステム構築とワンストップで提供。いまや企業活動において中核的な価値を占めるデータについても、社会インフラを支える企業グループとしての強みを生かしたNeutrix Cloudでしっかり支えていきます。
mineoについては、ユーザーのアイデアを基にしたユニークなサービスを数々展開しています。パケットが余ったらユーザー同士が共有する貯蔵庫に貯めておいて、足らなくなった人が使える助け合いのサービス。平日のお昼どきに混み合って速度が低下したときに「ゆずるね」と宣言して他の人に通信帯域を譲り、譲った回数に応じてパケットの特典を得られるサービスなど、ユーザー視点で設計してきました。B2Eの領域においても、こうした顧客体験づくりのノウハウを生かしてビジネスを伸ばしていく考えです。
Favorite
Goods
お気に入りのナイキのランニングシューズ。大阪マラソンのスポンサーになったのをきっかけにマラソンを始めた。この10年間、10キロを1時間程度のペースで走り続けることで「健康増進や気分転換に役立てている」と話す。
眼光紙背 ～取材を終えて～
光回線で味わった感動と教訓
1980年代の通信自由化の波が押し寄せてきた時代。都市間を結ぶ中継系と呼ばれるネットワークは鉄道や高速道路の会社が参入したのに対して、電力会社は地域を面でカバーするネットワークへの参入が本格化。当時大学院生だった荒木誠社長は、「これは面白いことができる」と思い関西電力に入社した。
勝負を賭けたのは2000年代に入ってからの光固定の「eo光」。当時まだ主流だったアナログ回線を使った高速通信・ADSLのユーザーを巻き取っていくときだった。ADSLを下回る価格帯のサービス申し込みを始めたその日の朝、続々と増える件数をカウントする会社のモニター画面に釘付けになった。「予想をはるかに上回る申込件数に感動を覚えたことは今でも忘れられない」と話す。
しかし、あまりの申込件数の多さに、ユーザーの中にはeo光の開通まで最長5カ月待ちの人も出てきて、「ユーザーに失望感を抱かせてしまった苦い教訓」も味わった。以来、ユーザー視点に立ったサービス設計やユーザー満足度の向上に、従来にも増して重きを置くようになる。企業向けのサービスも同様で、長く使ってもらい、人に勧めてもらえるサービス開発を重視していく。
プロフィール
荒木 誠
（あらき まこと）
1963年、兵庫県生まれ。87年、京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修了。同年、関西電力入社。2003年、ケイ・オプティコム（現オプテージ）経営戦略グループ経営企画チームマネージャー。11年、関電システムソリューションズ経営改革推進本部企画経理部長。12年、同社取締役経営改革推進本部副本部長。13年、関西電力経営改革・IT本部副本部長。16年、同社執行役員IT戦略室長。17年、ケイ・オプティコム代表取締役副社長執行役員。18年、同社代表取締役社長に就任。
会社紹介
関西電力グループのオプテージの昨年度（2020年3月期）の連結売上高は2577億円。従業員数は約2600人。19年4月1日付で旧関電システムソリューションズの外部顧客向けシステム構築（SI）部門、ならびに関西電力の社内ネットワーク構築部門を統合。社名を旧ケイ・オプティコムからオプテージに変更している。
