米国でデジタルコピー技術をめぐり、音楽業界とIT業界の溝が深まり始めた。音楽業界のロビー活動を受けて、デジタルコピーを制限する法案が準備されているほか、音楽業界に有利な判決も出始めた。デジタルコピー機能で新しい需要を起こしたいパソコン、家電、IT業界は、こうした動きに対抗する姿勢を強めている。

 米国からの報道によると、米連邦下院のハワード・コーブル議員とハワード・バーマン議員は、一般消費者がバックアップのためのコピーでさえ禁止することのできる著作権法改正法案の原案を作成、今月中に議会に提出するという。

 一方、米レコード業会(RIAA)が昨年10月にファイル交換サービスをロサンゼルス連邦地裁に訴えた裁判で、同地裁はファイル交換サービスの親会社が外国企業であっても米国法に基づき提訴できるとの判断を示した。

 この判断は、司法がレコード業界の主張に理解を示したものとして注目されている。 こうした司法の判断が増えていることから、RIAAではファイル交換サービスに加えて、同サービスを利用した個人ユーザーも今後は訴訟の対象にする考えを明らかにしている。

 こうした音楽業界の動きに対し、これまで協力的だったIT業界関係者の間で反発の声が高まっている。

 米IT業界の重鎮ながらこれまで目立った発言のなかった半導体最大手インテルのレスリー・バダス上級副社長は連邦議会のコピー禁止法案の公聴会で、「(同法案が成立すれば)技術革新の足かせとなり、IT業界という力強く成長している業界に修復不可能な打撃を与えることになる」と厳しく批判した。

 また、音楽業界とともにコピー防止技術「SDMI」の開発に協力したインテルのアンディー・グローブ会長は、業界紙主催の討論会で「これまで6年間もエンタテインメント業界と妥協点を模索するために努力してきた。しかし彼らの考え方を何一つ変えることができなかった」と発言、音楽業界の頑なな姿勢を非難している。

 こうしたなか、両業界の正面衝突を回避できる企業としてソニーへの期待が高まっている。 ペンシルベニア大経営大学院のピーター・フェイダー教授によると、音楽部門とIT部門の両方をもつソニーが、両業界を満足させるような新しいデジタルコピーのビジネスモデルを提示すれば、ほかの企業が追随する可能性が大きいという。

 これまで、新しい技術が登場するたびに、娯楽産業は新しいビジネスを生んできた。 VTRが登場した際には映画産業に壊滅的打撃を与えると心配されたが、映画ビデオの販売・レンタル市場は映画産業の稼ぎ頭に成長している。

 同教授は、パソコンによる音楽再生・複製する技術も、新しいビジネスを生む可能性があると主張している。 日本を代表するソニーにグローバル企業としての力量が問われている。(湯川鶴章)