かつては世界最大の見本市と形容されたこともあるパソコン見本市「コムデックス」。今年も米ラスベガスで開催されたが、例年に比べ出展社、入場者ともに激減。「コムデックスも今年で最後」といううわさが飛び交った。IT不況の影響が大きいが、業界が大きな節目を迎えていることも事実のようだ。

 コムデックスといえば、満員の飛行機、タクシー待ちの長蛇の列、それに「コムデックス価格」といわれるほど跳ね上がったホテルの宿泊費など、ラスベガスの街を一変させるほどの大型見本市というイメージが強い。離れた場所にある2つのコンベンションセンターを埋め尽くしても足らず、ホテルの宴会場や駐車場の仮設テントのなかでも展示が行われたものだった。

 しかしそれも2000年のコムデックスまで。23年目に当たる今年のコムデックスでは2つのコンベンションセンターの大型会場だけで十分だった。主催者のキースリーメディア・グループは正式発表していないが、出展社、入場者ともに00年の4割程度といわれる。

 また、開催前にキースリーメディアが会社更生法の申請の可能性を明らかにしたことから「コムデックスは今年で最後」といううわさが飛び交った。

 コムデックスの規模が大幅に縮小したのは、1つには長引くIT不況がある。今年出展していない企業の多くは、倒産したり買収合併されたりして既に存在しない。また、不況を生き残った企業の多くは業績悪化を理由に、派遣する社員数を大幅に減らしたようだ。

 しかし景気は今年が底で、来年からは順調に回復するというのが経済アナリストらの支配的な意見。それでも来年のコムデックスはない、といううわさが広まる背景にはパソコン業界が変革期を迎えているという事実がある。

 恒例となったマイクロソフトのビル・ゲイツ会長の講演のテーマは、家電製品を含むあらゆる機器がコンピュータ化されるというもの。同会長はこうした機器「スマートオブジェクト」の試作品を公開したが、詳細は年明けに開催される家電見本市「CES」で明らかにされる見通し。

 また、こうした機器は無線で結ばれることになるが、無線関連の技術は来春の携帯通信インターネット協会(CTIA)の見本市「CTIAワイヤレス」で発表されるもよう。パソコン業界が衰退しているのではなく、その裾野が拡大し分散し始めたわけだ。そしてコムデックスは専門性にかける見本市としてその存在意義を失いつつある。

 事実大手メーカーの間でさえ、来年のコムデックスを見合わせるところも増えている。出展社数や入場者数ではCESなどの見本市が既にコムデックスを上回るようになっている。

 一方マイクロソフトを始めとする米パソコン企業が技術革新の矛先を向けた家電分野や携帯電話分野は、もともの日本企業の独壇場だったところ。勢力拡大を続ける米パソコン業界の荒武者たちと、意気消沈気味の日本メーカーの争いがいよいよ本格化しそうだ。(湯川鶴章)