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情報サービス産業協会 情報サービス産業は淘汰へ

2003/02/10 19:12

週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載

 情報サービス産業は、淘汰の年になる――。来年度の見通しについて、情報サービス産業協会(JISA)の佐藤雄二朗会長は、こう警鐘を鳴らす。昨年末に経済産業省が発表した「ITスキル標準」にもとづき、実力のある企業は、自らの力で政府案件などの大型受注を獲得していくのに対し、そうした努力に欠ける企業は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の保護を受けながら先細りの事業展開を余儀なくされると分析する。

技能高め下請け体質脱却

 約13兆円と言われる国内情報サービス産業だが、昨年後半に26か月連続の前年同月比増の記録が止まり、一進一退の足踏み状態が続いている。これを打開するためには、国内IT投資全体の約2割を占める政府・官公庁のIT投資を、広く実力あるシステムプロバイダに開放しなければならない。

 佐藤会長は、「昨年末に経産省が策定したITスキル標準をもとに、いち早く技術力を身につけた企業が政府案件の受注を広げ、これを突破口に成長路線を歩み続ける。一方で、大手ベンダーが受注・設計したシステムの受託開発だけを請け負う“力仕事”的な下請け企業は、コスト低減の圧力に苦しむことになる」と見通す。

 3月には公正取引委員会が、これまで製造業にしか適用していなかった下請法を、情報サービスにも適用する改正案を国会に提出する。「製造業に比べて調子が良かった情報サービス産業だが、とうとう、下請法で保護しなければならない状態になってきた。これにより、われわれシステムプロバイダが進むべき方向は100%明確になった。まずは技能を高め、下請けからの脱却を図るべき」と、情報サービス産業に活を入れる。

 また、「米国の情報サービス産業の規模は日本円で約41兆円。日本の3倍強である。にも関わらず社数では約7000社と日本とほぼ同数。従業員は約90万人と日本の1.5倍しかいない。これは、米国の情報サービス産業が30年かかって淘汰を進めてきた証拠である。国内の情報サービス産業は、1960年代後半から始まった国産機愛用政策でずっと保護されてきた。大手ベンダー4社が政府案件の8割を獲り、下請けや孫請け、曾孫、玄孫と仕事を投げる」と語る。

 「米国は、『30%ルール』があり、官公庁の発注する3割を中堅・中小企業に発注するという決まりだ。国内でも、ITスキル標準などで実力を証明したシステムプロバイダが、大手ベンダー4社の下請けから脱し、自らシステム設計を手がける元請けにならなければならない。数千社の中堅企業が主役にならないと、国際的な競争力がある多様な情報サービス産業を育てられない」と厳しく指摘する。

 「たとえば、急成長する中国市場では、マイクロソフトやオラクルなど、パッケージ製品を輸出・販売する企業は進出しているものの、ERP(統合基幹システム)やCRM(顧客管理システム)などのシステム構築を手がける企業は、まだほとんど進出できていない。中国と日本は非常に近い隣国であり、実力をつけた日本のシステムプロバイダは、積極的に中国のシステム構築案件の獲得に向けて進出する余地は十分にある」と話す。
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