ニュース

SAPジャパン 中小・中堅市場へ本格参入 「SMB事業部」を新設

2003/09/29 19:32

週刊BCN 2003年09月29日vol.1008掲載

 SAPジャパン(藤井清孝社長)は、中小・中堅企業向けの販売力を強化するため「SMB事業部」を新設した。中堅企業向けERP(基幹業務システム)の新製品「mySAP ERP(マイエスエーピーイーアールピー)」を9月から出荷したことにともなう措置。来年半ばには、従業員10-100人規模の中小企業向けERP製品「mySAP Business one(マイエスエーピービジネスワン)」のリリースも控えるなど、本格的にSMB市場を開拓する。今後2年間で30-50社程度の新たなパートナーを獲得していく。

 「mySAP ERP」は、EAI(企業内システム統合)やポータル構築などの機能をもつウェブアプリケーションツール「SAP NetWeaver(エスエーピーネットウィーバー)」をベースにした製品。これに、大規模システム向けの従来製品「SAP R/3 Enterprise(エスエーピーアールスリーエンタープライズ)」にある会計・人事・販売など基幹モジュールを加えた。

 同社の大規模システム向け製品から、高額のSCM(サプライチェーンマネジメント)やCRM(顧客情報管理)などのモジュールを省き、「中堅企業が必要な機能に絞り込んだ」(竹田邦雄・アライアンスマネジメントバイスプレジデント)という。

 「mySAP ERP」は、導入後でも必要に応じてSCMやCRMの個別モジュールを追加できる。ソフトウェアの選択肢が増えたほか、レガシー(旧式)システムと接続が可能など、拡張性の高い製品になっている。

 同社は7月、製造・サービス業などに業種を絞り、業種別ノウハウのテンプレート(ひな形)を構築して、導入コストの削減や導入期間の短縮を図るERP製品「mySAP All-in-one(マイエスエーピーオールインワン)」の出荷を中小・中堅企業向けに開始。さらに、来年半ばには中小企業向けの「mySAP Business one」を国内でも発売する。そこで、中小・中堅市場に向けた体制を本格的に備えるため「SMB事業部」を新設した。

 また、本格的にSMB市場へ参入するため、大企業向けERP製品の導入で提携していた従来のパートナー以外に、オフコンやメインフレームのリプレースに実績のあるシステムインテグレータや、ISV(独立系ソフトベンダー)などのなかで、中小・中堅向けの事業を得意とするベンダーを開拓する考えだ。

 新設されたSMB事業部は今後2年間、チャネル開拓と中小・中堅企業向けにERP製品を導入する際のサポートをする。同社は国内で中小・中堅企業向けソリューションに実績がないことから、同領域のシステム導入に実績のあるシステムインテグレータとともに、短期間での導入方法や企業の情報システム担当者への教育方法などを体系化する。2年後には、パートナーとして30-50社と提携。同社全体のライセンス売上高に占める中小・中堅企業向け製品の売上比率を現在の約5%から、3年後には10-20%にまで引き上げることを目標にしている。

 竹田バイスプレジデントは、「大規模市場は国内外で飽和状態になっている。そのため、国内でも中小・中堅市場での製品を出荷し、導入ノウハウを増やす。当社の大規模向けERP製品への拡充も容易なため、この市場を狙う国内のERPベンダーとは、事業領域が違う」としているが、国内ERPベンダーにとっては、同社が中小・中堅市場に参入することで一気に市場争奪戦が激しくなることを意味している。
  • 1