ニュース

データプロジェクタ市場 モバイル性で新需要開拓へ カシオ、高輝度と小型化を加速

2003/11/24 19:37

週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載

 データプロジェクタ市場の競争が厳しさを増している。向こう数年は年率20%台の成長を維持するとの見方が強く、数少ない成長市場だけに参入企業も後を絶たず、世界では40社弱が覇を競い合っている。そんななか、カシオ計算機はDLP(デジタル・ライト・プロセッシング)方式の超小型機をもって参入した。「既存のデータプロジェクタという枠のなかで戦うのでなく、ノートパソコンとともに持ち運べる新しい情報機器として、モバイルプロジェクタという全く新しい市場を開拓していく」(持永伸之・羽村技術センター開発本部第一コンシューマ統括部第一開発部長)意向だ。

 2002年度のデータプロジェクタ市場は、国内約15万台、世界では約165万台の市場規模をもち、内外ともに年率20%台の成長を今後数年は続けるとの見方が強い。特に国内は好調で、今年は30%強の成長で20万台は突破するだろうというのが業界の期待だ。販売の主力ルートは訪販系ディーラー。ここ数年、急速な価格低下が進んでおり、主力製品の価格は30-60万円となっている。

 一方、開発面で焦点となっているのが、輝度とサイズ・重量だ。本体重量3kg以下のマイクロポータブルクラスの販売台数が全体の70%を占めている。

 輝度はルーメンと表現され、製品によって1000ルーメンから1万ルーメン以上までと幅広い。また、輝度を上げると本体のサイズが大きくなる。蛍光灯を消さずに見えるようにするには2000ルーメン以上は必要で、3kg以下で2000ルーメン以上を実現するのが、当面する最大のテーマになっていた。

 そんななか、カシオ計算機が製品化した「XJ-350」(価格43万8000円)はA5ファイルサイズ、約1.8kg、2200ルーメン、「XJ-450」(同56万8000円)はB5ファイルサイズ、約2.4kg、2800ルーメンを実現している。

 「輝度を容積で割った輝度容積比を重視しているが、他社は300-500なのに対し、当社は2倍以上の1018を実現、小型化と明るさを両立させた。2倍ズーム機能を搭載し、上位モデルには斜めの場所からでも投影できる縦横自動台形補正機能も付けた」(持永部長)と話す。

 「ノートパソコンと一緒に持ち運んで、どんな場所でもプレゼンテーションができるようになる。新しいタイプの情報機器と考えており、カシオペアというモバイル機器に共通のブランドもその意味で採用した。既存のプロジェクタ市場のなかで争うのではなく、全く新しい市場を創造していく」(山本喜之・営業本部第一コンシューママーケティング部CESマーケティング室担当課長)と強調する。

 果たして新市場を開拓できるのかどうか。今後の大きな焦点になっていきそうだ。
  • 1