これまでは全くの自由競争だったVoIP市場に、法的規制が加えられる可能性が高くなった。新興企業にとっては大打撃だが、しかし大手企業が望むほど厳しくはならない可能性も高い。ケーブルテレビ各社の参入で、三者三様の思惑が交錯し、しばらくは混沌とした状況が続きそうだ。

 昨年10月、ミネソタ州で新興のVoIP事業者であるボナージ社に対し、従来の電話事業者と同様の免許を取得するよう求める判決が下された。これによって、同社にはユニバーサル・サービス・ファンド(FCC・電話会社が共同で出資する基金)への多額の拠出や、緊急時の回線確保など各種の義務と責任が発生することになり、その負担から最悪は事業撤退の可能性も取りざたされている。

 FCCは、VoIPもインターネットのサービスである以上、連邦政府の介入は望ましくなく、自由競争が基本という見方を示している。しかし大手電話会社各社は、自らの利益喪失や各種の金銭負担、危機管理などから、自由なVoIP事業者に対して、かねてより不快感を表明しており、政治的圧力も使いながら何らかの規制を求めている。

 一方第3の参入グループであるケーブルテレビ各社は「トリプル・プレイ」と呼ばれる統合サービス等で付加価値を高めると共に、地域電話会社などと提携し本格参入の準備を整えつつある。

 FCCはこれらの状況を踏まえ、2003年12月に「VoIPフォーラム」を開催。同時に設立されたワークショップで今後の方向性を探ることになった。しかし結論は当分の間先送りされることが既に決定している。

「従来の電話会社と同様の規制をするべきではない」というインテルの声明に代表されるように、参入するどの事業者も厳しい規制を望んではいない。しかし最低限のルールがないと、市場が荒廃し、利用者の不利益になるとの意見もある。いずれ緩やかな規制が実施されることは確実視されている。

 大統領選挙前という時期でもあり、電話会社の支持を受ける側は規制を肯定し、税収不足に悩む州も同様の考えだ。しかし規制実施までは時間があり、それまでは建前上は従来通りの競争が行われることになる。

 米国の調査機関であるNMRCが「正式な法案の設立後には、米国内の音声通話の4割はVoIPへ移行するとみられる」と発表するなど、市場は順調に成長を続けると見られるが、大手電話会社が窮地に陥るような事態は避けたいというFCCの思惑も働き、ある程度市場を成長させながらも、各方面に影響を及ぼさないための配慮が今回のフォーラムであると言える。

 公正な立場をとりつつ、大手主導を既成事実として認めていきたいというのがFCCの真意と見られている。(田中秀憲)