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三洋電機、三洋ホームズ 「マルチメディアマンションシステム」を開発

2004/09/27 21:09

週刊BCN 2004年09月27日vol.1057掲載

 ITが「ビジネス」の分野から「暮らし」の分野に着実に浸透してきている。通信インフラを整備する住宅が増え、最近では「インターネットマンション」を謳った物件も数多く見られるようになった。しかし、実際には各住戸にLANコネクターを配置し、マンション内でインターネットと接続したLANを構築した程度というものも多い。三洋電機とそのグループ会社である三洋ホームズは、そうした段階から一歩進めた「マルチメディアマンションシステム」を開発、運用を開始した。(山本雅則)

ウェブ端末通じ多様なサービスを提供

■「WiTH for SCREO」システムを投入

 8月28日から入居が始まった「サンメゾン守口ミンスターコート」は、京阪本線守口市駅から徒歩4分に立地する。大阪のビジネスセンター・淀屋橋(大阪市中央区)に電車で11分だが、同時に三洋電機本社も指呼の間にのぞむ距離にある。お膝元といえる場所だけに、「コミュニティ」、「セキュリティ」、「ホームコントロール」の機能を融合させた「WiTH for SCREO(ウィズフォースクリオ)マルチメディアマンションシステム」を投入した。

「2002年3月に大阪市内の物件で、コミュニティ機能のみを盛り込んだシステムを稼動させた。第1世代にあたるが、利用状況は芳しくなく、サポートの面でも問題があり、より入居者に近いサービスを模索し、今回のシステムとした」とは、三洋ホームズの中谷聡一・マンション事業本部営業2課長兼商品企画業務担当。このため、ハードの改良はもちろん、ソフト面でも可能な限りのアイデアを盛り込んだ。

 基本的な操作は、家電感覚のタッチパネルにカスタムブラウザやリモコン機能なども組み込み、住居内のどこでも持ち運びできるウェブ端末「スクリオ」行う。全53戸に標準装備するのは、①電子回覧板や管理組合の議決事項投票、居住者間のメッセージなどの管理サービス機能、②地元の店舗や医療・公共機関などのタウン情報、生活をサポートする健康やペットに関する情報、地域の商店との連携により生活商材を宅配してもらうeショップシステム、クリーニングや宅配便の引き取り依頼などのメッセンジャーといった利便性向上サービス、③共用部のカメラ監視や来訪者確認によるエントランスドアの開錠といった共用部セキュリティシステム──など。

■“ただ”のセキュリティシステム

 一方、オプションとして設定したのが、専有部自己警備型セキュリティシステムとホームコントロールシステム。後藤啓二・三洋電機コンシューマ企業グループAVソリューションズカンパニー開発商品ビジネスユニットマネージャーは、開発にあたって「“ただ”のセキュリティシステムを」との指示を受けたという。専有部について警備員派遣型のセキュリティを導入すれば、ランニングコストが高くつく。そこでITを活用し、コスト低減が可能な自己警備型のセキュリティシステムを取り込んだ。就寝前や外出前の戸締り確認や防犯機能セットがスクリオ端末の画面を通じて行えるほか、外出先からも携帯電話を通じて遠隔制御ができる。万一、異常が発生した場合には、大音響サイレンの警報により威嚇するとともに、異常を知らせるメールを携帯電話に送信するようになっている。警備員が駆けつけるわけではないが、盗難などの未然防止と異常発生時に警察などにすみやかに通報することが可能になる。

 また、遠隔制御機能を利用することで、照明やエアコンのオン・オフも可能。もともと、スクリオ端末には、インターネットを通じてテレビ番組を確認し、テレビやビデオの操作ができるリモコン機能が内蔵されている。このため、オプションの照明・エアコン制御機能を加えると、ホームコントローラとしても十分に利用できるということだ。

■関東のデータセンターで管理

 さまざまな機能をもつマルチメディアマンションの実現に当たって、三洋電機グループでは個別マンションの性能向上だけではなく、システムとして開発したことが特徴となっている。マンション自体は大阪府守口市にあるが、さまざまな情報を管理するサーバーは関東の日本NCRサービスのデータセンターにある。タウン情報や生活サポート情報などのコンテンツは専門会社が請け負い、年4回更新するが、データセンターにあるサーバーで処理すればいい。居住者、つまりクライアント側は、機能を利用するだけだ。今回、サンメゾン守口に導入したが、システム自体は、そのまま他の物件にも適用できる。物件に応じて必要な機能を変更することも可能だ。

「まだまだ、臨床試験という段階だが、ベースとしては完成形に近づいた。今後、アプリケーションをどれだけ増やすかということ。あるいは、高齢化社会において、防犯だけでなく入居者自身に変事が生じた場合の緊急通報などにも応用していきたい」と後藤マネージャー。もちろん、電機メーカーとして、将来のデジタル家電との連携の可能性を探ることも当然だ。

 三洋ホームズとしては、「当面、他のデベロッパーとの差別化のポイントと位置付け、次期物件も計画中」(中谷課長)だが、一方でシステムとしてユーザーを増やす必要もある。コストとの見合いという面はあるが、実際に分譲・賃貸を問わず、他のデベロッパーからの引き合いも入ってきている。単なるインターネットマンションから、本当の意味でのITマンションにという動きが加速しそうだ。

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