【上海発】上海市は昨年12月、同市のGDP(総生産額)全体に占めるIT産業の比率が11%に達し、最大の産業になったと発表した。液晶パネルなどの大型工場が相次ぎ本格稼働し、電子部品の生産基地として急成長。一方、ソフトやeコマースなどノンハード分野の隆盛も目立つ。だが、この結果を単純に喜べない現実もある。

 上海市のGDPは2004年、中央政府の景気抑制策にもかかわらず、前年から15%ほど伸びて推定9兆3000億円(1元=13円で換算)。IT産業がその11%を占めるということは、ちょうど1兆円規模となったことになる。

 もともと上海市は、中国経済の要として工業・サービス業が発達していたが、90年代中盤からハイテク産業の集積に力を入れ、特にIT産業の育成には熱心だった。浦東開発地区に「金橋輸出加工区」、「張江ハイテク区」などの産業団地を整備し、5000社以上の外資系企業も誘致している。

 世界の工場らしくハイテク機器の生産拠点としての成長は目覚ましい。例えば、上海域内でのパソコン生産量は95年時点ではわずか4万台だったが、今では台湾の達豊コンピューターグループだけでノートパソコンを1000万台以上生産している。これは世界需要の4分の1を占める。

 昨年10月には、地元の電子部品大手である上海広電とNECが、総額850億円を投じて設立した液晶パネル工場が着工から16か月で本格稼働を開始。今年は1300億円の売り上げを見込んでいる。上海を主な生産拠点とする中国半導体メーカー、SMIC(中芯国際集成電路製造)は、生産量が世界第4位にランクされる。

 上海は市街地こそ古い工場が立ち退き、代わりに高層マンションや商業ビルが立ち並ぶが、郊外では逆にハイテク工場の集積が加速している。

 ソフトやeコマースなど、ノンハード分野の成長も著しい。上海全体のソフト生産高の半分を生み出す浦東ソフトパークは就労人口が1万5000人に達し、売上高が2000億円に迫る。現在も施設の拡張が進んでいる。

 豊富な消費人口を背景に成長するeコマース事業者も、拠点は上海の場合が多い。中国オンラインゲーム最大手の盛大回路は300万人の登録ユーザーを抱え、米ナスダック市場に上場を果たした。中国最大の旅行サイトを運営し、ホテルや航空券の予約代行を手掛けるCTRIPは昨年、取扱高が約500億円に達した。

 このように上海のIT産業を見渡せば、新設のハイテク工場がフル稼働しており、ソフト輸出高やeコマース事業者の収益も倍々ゲームで増えている。まさにIT産業は、上海を活気づける原動力の1つとなっている。上海市当局としても「IT産業の集積地」というイメージを対外的にアピールしたいところだろう。

 だが、今回の発表を額面通り受け取れない面もある。上海のIT産業関係者はこう指摘する。「表面上の数字は確かに良いが、中身をよく見れば悲観的にならざるを得ない。IT産業で活躍する企業の大半が外資系で、逆に中国資本はわずか。ほとんどの中核技術を外に頼っている」。

 中国全体でハイテク製品輸出の大部分は外資系企業によって行われ(その中でも100%外資の比率が高い)、中国の公営企業が占める比率は10%しかない。

 上海の場合も昨年の輸出総額に占める外資系企業の割合は、前年から5%ほど増え約70%という。

 確かに中国の産業政策は、海外から外資と技術を呼び込み、それを媒介にして国内産業の育成を図るというものなので、現時点で中国企業の劣勢はある程度織り込み済みだろう。

 だが、「技術開発力や想像力を高めていかなければ、中国企業に将来はない」(前出の関係者)という厳しい現実もある。中国経済の“要”である上海で、IT産業の総生産高が全GDPの10%を超えたからといって、喜んでいられるような状況ではない。坂口正憲(ジャーナリスト)