BCN(社長・奥田喜久男)は2月18日、東京・四谷の主婦会館プラザエフで「第4回BCNフォーラム」を開催した。昨年11月に続き今回も2つのセッションで構成し、第1部では「PマークかISMSか」をテーマに、個人情報保護法の完全施行を控えプライバシーバーク(Pマーク)とISMSの認証取得に関しTBCソリューションズの朝賀康義・チーフコンサルタントに、第2部では「中国IT最新事情とソフト開発の現状」をテーマに、米IBMと中国レノボグループの戦略についてキング・テックの王遠耀・代表取締役社長にご講演頂いた。前号掲載の第1部の講演レポートに続き、第2部の講演要旨をレポートする。(田澤理恵●取材/文)

レノボグループに見る中国ビジネス
信頼関係”が重要に

■商社からパソコンメーカーに

 昨年12月8日、中国最大のパソコンメーカーである聯想集団(レノボグループ)が米IBMのパソコン事業を買収するというニュースに、IT業界のみならず衝撃が走った。中国から見た状況と、現在の中国の情報をお話ししたい。

 日本でいえば国の戦略の立案などを行う政府機関である中国科学院のメンバーが1984年に飛び出してIT商社のレジェンド(現レノボ)を作った。レジェンドは技術をもっていなかったため、商社として海外の製品を輸入し、中国科学院関係に売ることで大成功を収めた。

 90年に入ってからパソコンに着目し、ITの事業にさらに深く入っていった。独自で台湾企業や日本の東芝と連携しながら開発製造を行い、中国科学院の冠を得ながら一気に金融、官公庁、大学にIT機器を納入していく。急成長を遂げた同社は、90年代後半には中国ナンバーワンのパソコンメーカーになった。

 聯想が貿易、商社からパソコンメーカーになるきっかけは、システムインテグレーションや代理販売に着手したことだ。01年6月には、巨大化していた組織を3つの事業に改変。中国科学院が株式の65%を出資して現レノボホールディングスを設立。レノボホールディングスを持ち株会社とし、パソコン事業を行う聯想、貿易、システムインテグレーションのほか他社製品代理販売を行う神州数碼(デジタルチャイナ)、投資事業を行う聯想投資の3社を設立した。

■中国市場に進出するIBM

 レノボとデジタルチャイナはレノボホールディングスから50%ずつ出資を受けており、この2社は資本主義の金融政策に力を入れている香港で、資金調達を目的として香港市場に上場した。香港で株を売って得た資金で、中国国内で事業を展開した。

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 その後、03年にブランドの「レジェンド」を「レノボ」に変更し、地域子会社などネットワーク網を作りレノボを含むレノボグループになった。

 レノボグループがIBMのパソコン事業を買収したということを別の角度から見ると、戦略的な事業提携だと考える。このような資本構成のなかで、IBMもレノボグループの株式18.9%を保有することになった。これによってIBMは、レノボグループを通じて中国科学院、官公庁、大学、民間企業、すべてにおいてパソコンだけでなく基幹系システムなどを納入することが可能になり、中国IT市場に食い込むことができるようになる。

 これらについては、中国サイドから見ると国際的な提携であり、非常にうれしく受け止めている。中国政府はスローガンに、外へ出て行くことを意味する「走出去」を掲げている。政府は資源、先端技術コンピュータ、交通システムなどを考えた国家資金をグローバル化に積極的に投資していく方針である。IBMとの提携は、国と国の提携と言える。今までの中国では考えられないことだ。

■日中間は「政冷経熱」

 中国では、経済成長率が毎年30%といわれており、建設や自動車業界なども過当競争になっている。短期のマーケットとしては、08年に迫った北京オリンピックを前にしてIBMが中国市場に着目したといえる。レノボ独自で海外に進出するには、人材の確保など膨大なスキルが必要となり難しい。

 03年にレノボの社長から日本への進出に関する相談を受けたが、チャネルがないことや日本特有のマーケットを考えるとブランド力のないレノボに勝算はないだろうと助言したことがあった。

 しかし、今回のことでレノボ製品が日本市場に入ってくることになるだろう。レノボホールディングスは、今後、米ニューヨーク州に本社を移すことになり、国際的企業になっていくだろう。

 中国に進出したいという日本のソフト開発会社から相談を受けることが多い。そういった企業にアドバイスすると、中国の経済は現在非常に熱くなっており、日中間は「政冷経熱」現象だ。ビジネスの商談中には、政治的、歴史的背景には決して触れないことを薦める。そして、取り引きはまず少量から始め、信頼関係を築いていって欲しい。