半導体大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD、ヘクター・ルイズ会長兼CEO)は米現地時間の6月27日、半導体業界最大手の米インテルを反トラスト法違反で訴えた。パソコン用マイクロプロセッサ市場における独占的地位を濫用し他社製品の購買を禁じるなど違法な商行為を行ったとし、トップ同士の和解で収まった10年前の法廷闘争を復活させた。

 「インテル反トラスト法裁判─なぜAMDは訴えたのか」という見出しの全面広告が全米主要紙に出たのは起訴から2日後。これと平行してAMDは日本でもインテル提訴に踏み切り、「台所の流し台以外のものは手当たり次第投げつけている」と米国のアナリストを唸らせた。そこには、起訴に絡めて自社製品の優位性を訴え、その製品がシェアの伸び悩みに直面しているのはインテルの商慣行に問題があるからだという自社の主張を一般に広めようというAMD側の意図が明らかだ。

 AMDとインテルは、1980年代から90年代はじめにかけて対立を繰り返した犬猿の間柄。90年代初頭に同様の起訴事実でインテルを訴えた時には、当時のインテルのクレーグ・バレット社長がAMD社長と和解を結んだが、今は両社長とも引退している。

 起訴に踏み切った背景について、AMDは今年3月に日本の公正取引委員会がインテル日本法人に出した排除勧告、それに続く欧州委員会のインテル調査乗り出しという海外の活発な動きが追い風となったと説明した。国外の捜査に積極的に協力してきた業界2番手のAMDが米国内の法廷で白黒はっきりさせるには、インテルに対する国際的な風当たりが強い今しかない、というわけだ。

 48ページに及ぶ訴状には、AMDが“インテル圧政の犠牲者”と呼ぶパソコン製造・販売関連の大小合わせて38社からの聴き取り調査で得た具体的な事例を収録、違法性の高い営業手法を7通りのパターンに分けて記載した。

 その1つに、他社製品を採用した顧客に対する“報復措置”がある。訴状では米ヒューレット・パッカード(米HP)がAMD製モバイル用プロセッサの採用を決めた04年第4四半期にインテルが割引分払い戻し小切手の差し止めに踏み切ったことなど挙げた。

 AMDによると、影響を受けた企業はそれ以外にもデル、ゲートウェイ、東芝、日立製作所、ソニー、サーキットシティなどがあり、このうちデルと東芝、ソニーについては競合他社と取り引きしないことを条件に多額の支払いを行ったが、逆にAMDと取り引きを行ったゲートウェイに対しては「グアカモーレになるまで殴った」(ゲートウェイ社員)という。グアカモーレとはアボカドなどの野菜を潰して混ぜたメキシコの定番料理のこと。インテル提訴を伝える第1報で米国中のマスコミがこの表現に飛びついたことは言うまでもない。

 さらに00年には、旧コンパック・コンピューターがAMDと取り引きを行ったが、それが元でサーバーに必要なインテル製マイクロプロセッサが一部出荷差し止めとなり、コンパック・コンピュータはAMDからの購買停止に追い込まれた。その事情をAMD幹部に伝える中で当時のマイケル・カペラスCEOは、「私も頭に銃を突きつけられているのだ」と語ったと訴状は続く。

 「文句半分、宣伝半分」と反トラスト法の専門家が評するように、その起訴内容は生々しい証言とディテールに満ちている。これを盾にAMDのへクター・ルイズ会長兼CEOは公式声明で、「顧客には選択の自由、技術革新の恩恵に預かる権利があるが、マイクロプロセッサ市場ではこれが剥奪されてきた」と糾弾した。

 全面広告が出た日、インテルのポール・オッテリーニCEOは、「インテルは進出先の国法を常に遵守している。アグレッシブかつ公正に競争し、最高の価値ある製品を消費者に届けてきた。それは今後も変わらない」と反論したが、その合法性をどこまで証明できるのか、業界の注目が集まっている。(市村佐登美)