日立情報システムズ(原巖社長)は、主力の中堅企業向けERP「TENSUITE(テンスイート)」の販売形態の多様化を進める。個別業種向けの品揃えを増やし、ソフトウェアをサービスとして提供するSaaSへ対応させるための準備にも着手する。個別受注生産の業種向けのパッケージ化はすでに始めているが、今後は食品卸や医療機器卸などに対応した業種パッケージの開発を検討。また来年度から、SaaS化の概要設計に入る見通しだ。

 中堅企業向けERPは参入ベンダーが多く、激しい競争にさらされている。個別業種に対応したパッケージの品揃え拡充や、SaaSによるサービス提供に取り組むことで勝ち残りを目指す。

 個別業種対応では、今年8月に受注生産向けの生産管理・製番管理システムを製品化。最小構成のライセンス価格を従来より大幅に安い130万円からに設定した。今年度(08年3月期)中に機械器具卸業向けのパッケージも予定している。同社では個別業種パッケージを「Suiteシリーズ」と名づけ、「今後、順次品揃えを増やしていく」(中島義博・TENSUITE設計部拡販支援グループ主任技師)としており、向こう3年間で対応業種を10業種ほどに増やす。

 主力のTENSUITE本体は、1受注あたりの平均的な商談規模が2000-3000万円と中堅企業でも比較的IT投資余力がある客層が多かった。個別業種対応版のSuiteシリーズでは価格を安く抑えることで、販売ターゲットのすそ野を広げる。最小構成の価格を安く設定し、追加機能も出来合いのオプションの中から選択できるようにする。こうした仕組みにより平均的な商談規模を1000万円以下に抑える。ターゲットとする業種に強い販売パートナーの開拓にも力を入れる。

 また来年度からはSaaS化するための概要設計に着手する。同社は中期経営計画でオンデマンドサービスを推進する“プール化構想”を打ち出しており、自社製品のTENSUITEは主力のオンデマンドサービスと位置づけていく方針。すでにウェブ対応は済ませており、自前のデータセンターからASP方式で提供するサービスメニューも揃えた。

 従来のASP方式では顧客1社ずつ専用のシステムをデータセンターに設置しなければならず、顧客企業がサーバーを自社内に設置するよりも「割高になる」傾向がある。この影響でASP方式の採用率は期待していたよりも高くないという。セキュリティや可用性などの設備を揃えたデータセンターの割高さが、コストに敏感な中堅企業向けのビジネスではマイナスに働いている。SaaS化では価格競争力をどう高めるかが課題になっている。

 TENSUITEはこれまで年間50-60社のペースで顧客企業に納入してきた。今後は個別業種への対応やSaaS化、ビジネスパートナーの拡充などを行うことで、数年後には年間100社ペースで納入を目指す。これにより同事業の年商規模を現行の1.5倍に増やす。