EMCジャパン(諸星俊男社長)は、中堅・中小企業(SMB)の「ボリュームゾーン」に対するエントリークラスの外付型ネットワーク・ストレージ製品を「販売2次店パートナー」経由で拡販する策を本格的に開始した。同社は昨年8月、2次店向け販売支援プログラムを開始したほか、現在までに2次店の取次先となる大手ディストリビュータ3社と提携。この先、取次店と協議して2次店へ効率よく流通させるため、サーバー統合などの用途に応じて他のハードウェア製品を組み合わせた「パッケージ」を揃えるなど、体制を整備する。今年度(2009年12月期)は2次店(現在29社)を200社に拡大し、SMB市場で先行する競合メーカーを追撃する。

 昨年8月に開始したのは「EMC Velocity(ヴェロシティ)アドバンテージ・パートナー・プログラム」という新たな「販売2次店パートナー」向け販売支援プログラム。SMBの基幹システム向けネットワーク・ストレージの「EMC CLARiX AX4」(市場想定価格80万円前後)や「Celerra NX4」(標準価格231万円)などエントリークラスの製品市場を拡大するために国内法人が独自に立ち上げた。プログラム開始と前後して、2次店にとってEMC製ストレージの仕入先(1次店)となる大手ディストリビュータとしてソフトバンクBB(契約・昨年7月)、大塚商会(同)、ダイワボウ情報システム(同11月)の3社と「Velocityパートナー」の販売契約を結んでいる。

 昨年度中は同プログラムに基づき、3社とSMB市場に展開する方策を個別に協議。各社のディストリビューション戦略に応じた2次店が「売れる」仕組みとして、サーバーやミドルウェア、同社傘下のVMwareが持つ仮想化製品とストレージなどをセットにし、EMC側で検証した「パッケージ」ソリューションを提供するビジネスを展開する計画だ。例えば、ダイワボウ情報システムであれば「サーバー統合向けDiSストレージ・ソリューション」といった形式で2次店へ卸すことが予想される。この仕組みだと、手離れよく「売る」ことができるようになる。

 同プログラムではこれまで、1次店を経由してEMC製品を仕入れるために、EMCジャパンと「認定再販売業者マーケティング・サポート契約(NSA)を交わすことが条件だった。同社は2次店として全国の地場で影響力のある販売系SIerなどを想定している。だが、当初の契約方法だと敷居が高く、チャネル開拓に支障をきたすことから、3月上旬には簡易な「申込制」に切り替えて、パートナーを広く募る。

 2次店に対しては「導入前の教育やサポート体制などを順次整える」(桜場良幸・執行役員パートナー事業本部長)と、まずは有償・無償のトレーニングを開始したほか、これまでなかった1次店経由の販売に対する報酬(インセンティブ)を提供するなど、2次店がEMC製品をデリバリするうえで障壁となる点を解消した。

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 将来的には「パートナーと一緒に営業展開する直販部隊が2次店をサポートする仕組みも整えたい」(四條満・常務執行役員)としている。具体的には、1次店と練っているビジネスプランなどと並行して、従来からあるストレージ使用量に応じて課金したり、CO2排出量を「オフセット」するなどの仕組みを揃えた「グローバル・ファイナンシャル・サービス(GFS)」の提供も検討。「ボリュームゾーン」へ向けた地道な展開を加速する計画だ。

 桜場・執行役員は、「これまで、SIパートナーと直販部隊で一緒に商談を行ってきたが、このノウハウを“横展開”できていなかった。ストレージは他の基幹システムの付属製品とみるパートナーは少なくないが、今後はストレージを主にユーザー企業へ提案できるパートナーを増やす」と語る。米EMCのワールドワイドでは、ミッドレンジ市場向けが売上高の約30%を占め、年率50%も伸びる有力市場になっている。国内の同市場では、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)などの追随を許し、メーカーシェアが10%台という。これを早期に「15%まで引き上げることが目標」(諸星社長)としている。(谷畑良胤)

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欠かせない「支援策強化」

 EMCジャパンが2次店拡大の戦略を打ち立てることが可能になった背景には、大手流通卸のダイワボウ情報システムと大塚商会、ソフトバンクの3社を1次店として確保したことがある。

 大手3社と代理店契約を結ぶ前は、ディストリビュータとして確保していたのはシーティーシー・エスピー(CTC SP)やネットワールドなど。ほかのストレージメーカーと比較すれば、ネットワーク関連機器を中心に卸事業を手がけていたディストリビュータだった。

 そのため、ユーザー企業がストレージを導入する際に決め手の一つとしているサーバーとのセット販売を行うには手薄だった感がある。2次店となり得るSIerにとっては、CTC SPやネットワールドなどからEMC製ストレージ機器を仕入れるよりも、NECや富士通、日本IBM、日本HPなどサーバーを持つストレージメーカーからサーバーとストレージをセットで仕入れたほうが製品の互換性を含めて売りやすかったのだろう。

 また、CTC SPが伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)で、ネットワールドが大塚商会のSI部門などといったように、両社ともストレージ機器の卸に関しては親会社を2次店として提供するのがメインだったといえる。CTCと大塚商会は、EMC製ストレージ機器のターゲットを中規模~大規模システムに重きを置いており、SMBは二の次だった。

 今でもCTC SPやネットワールドともパートナーシップを組んでいるが、SMBをターゲットとする2次店を確保できないジレンマに陥っていたEMCジャパンにとって、昨年夏の大手ディストリビュータとの協業によりエントリークラスのストレージ機器を拡販できる体制が構築できたのは願ってもないことだった。しかし、1次店とのパートナーシップ深耕を含めて販社を確保するため、今後はサーバーとストレージを持つ競合他社を上回る支援策強化が欠かせないだろう。(佐相彰彦)