業務ソフトウェア大手のピー・シー・エー(PCA、水谷学社長)は、同社主力のERP(統合基幹業務システム)「PCA Dream21」を企業規模に応じて「3階層」に分けた新製品を9月から順次、販売開始する。従来は年商5~300億円以上の企業層に一つのERPで対応してきた。しかし、年商5~50億円の企業が既存顧客の大半を占め、ユーザーや販売側のニーズに応えるために階層分けに踏み切った。このターゲット向けには、競合するオービックビジネスコンサルタント(OBC)が双方向性を高めた新製品を9月下旬に投入するなど、オフコンなどの買い替え需要獲得競争が激化してきている。

事務機ディーラーにも「売れる」

 PCAは出荷8年目に入った「PCA Dream21」を大幅に変更する。同ERPを3階層に分けて新発売する。新製品は企業規模に応じて年商5~50億円を「PCA Dream21 Suite」(発売9月)、同50~300億円を「同Standard」(同9月)、300億円以上を「同Enterprise」(同11月)に分割。各製品は、顧客の業務形態に応じて特定の処理メニューのパフォーマンスに特化したインデックス(データベースの索引)をデータ領域ごとに適応できるようにしたほか、処理速度を実測値で約18倍にアップした。

 また、Dream21はカスタマイズ案件が多いことから、「定額性にしたほうが顧客に全体のイニシャル(初期投資)が見えやすい」(亀井俊宏・Dream21事業部システム営業課長)と、販売パートナーの要望などを受け、同Suiteに関してはCAL(Client Access License)ベースの定額設定に変更した。価格はパートナーに示していたDream21の定価に比べ、4割近く安くした。マイクロソフトのエントリー版のデータベース「SQL Workgroup Edition」を採用したことなどで、低価格を実現することができた。


 国内では、給与や固定資産などに関する法令や制度改正が相次ぎ、クライアント・サーバー型のスタンドアロン製品では補えない基幹系の業務連携性を重視するニーズが増えてきた。このため、「年商5億円程度の企業でも初めから同Suiteを導入し、徐々に業務モジュールを足せるシステムにした」(亀井課長)と、3階層の製品に共通利用できる「業務モジュール」を多数用意して、ユーザー企業が必要に応じて付加できるよう利便性を高めているのが特長だ。

 同社はまず、年商5~50億円前後の顧客をターゲットに、SIerや事務機ディーラーのパートナー経由で販売を強化する。亀井課長は「当社のスタンドアロン製品を主体に販売する事務機ディーラーにも売れ、パートナーに収益をもたらすERPになった」として、Dream21の主力パートナーだった既存SIerに加え、地域の販社など幅広いチャネルから販売できる体制を構築する計画だ。

 PCAは「オフコンや他社のオープン系製品を長く入れているSMBを狙う」(亀井課長)と、同社営業部門でつかんだ見込み案件を積極的にパートナーに提供する。Dream21は今後1年間で、従来平均の1.5倍に当たる年間100システムの導入を目指す。

 一方、SMB向け業務ソフト最大手のOBCは、PCAに先立ち年商50億円までの企業を対象にした新業務ソフト「奉行iシリーズ」をリリースし、9月28日から販売を開始する。同シリーズを導入することで、インターネットを介したさまざまなサービスが受けられるほか、2000以上の機能アップを図った。来年度以降に予定されている労働基準法や税制改正などを「時間をかけずにネットを介して迅速にアップデートでき、適宜情報提供できる」(大原泉取締役)と、低価格なパッケージでありながら利便性の高い製品にして、自社製品のリプレースやバージョンアップの顧客の確実な囲い込みを狙う。

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オフコンリプレースが本格化

 中堅・中小企業(SMB)向けERP(統合基幹業務システム)の国内市場は、世界同時不況の影響を受けて「案件の先送りや延期」に見舞われた。しかし、経済に「底打ち感」が現れ、今秋以降にERPの導入機運が盛り上がると各種調査会社は予測している。年商50億円以上の企業になると、IFRS(国際会計基準)への対応が現実味を帯び、システム刷新を促しそうだ。

 このため、オフコンや使いづらくなった基幹系のオープンシステムを再構築し、運用保守費を抑えた柔軟性の高いインフラに変える動きが活発化しているとみられる。PCAは、こうした市場の動きとも呼応して「安価な統合型システム」を売りに、「初めから統合型で順次業務モジュールを追加できる」ようにすることで、動き始めたリプレース需要を獲得する戦略だ。

 従来の「Dream21」は、幅広い顧客層に対応できるメリットがある反面、エントリークラスの年商5~50億円の企業に“割高感”があったことは否めない。この間、SAPが「SAP Business One」をリリースし、大手SIerと連携してこの層を取り込み始め、住商情報システムやOSKなど上位陣の攻勢もあって伸び悩んだ。この状況を巻き返すために、低価格でパートナーにも扱いやすいERPを投入したということだ。

 一方、最大の競合であるオービックビジネスコンサルタント(OBC)も、中堅・大手向けERP「奉行V ERP」が不況の影響で伸び悩んだ。ここで主力顧客層への“原点回帰”を試み、年商5~50億円の企業をターゲットに「奉行iシリーズ」を出し、派手なテレビCMで顧客やパートナーの心を打つ手段に出たことは偶然ではないだろう。地域で活躍するSIerの声を聞くと、やはりこの層への製品提供を望んでいるからだ。

 両社を含めSMB市場向けにERPを出すソフトウェアベンダーが、今秋以降に再度浮上できるか、注目したい。(谷畑良胤)