デル(ジム・メリット社長)は、ITベンダーを通じた間接販売(チャネルビジネス)の体制強化で10月に新施策を打つ。まず中旬までにパートナー契約を結ぶITベンダー向けの支援ポータルサイトを大幅リニューアル。同月末までには、デルとパートナーの営業がぶつからないようにする案件共有・管理ツールのパイロット版を提供する。直販主義から一転、約2年前から水面下でパートナー企業の勧誘を開始し、現在13社のパートナーとチャネルビジネスを展開する同社。一連の施策は新規パートナーの開拓ではなく、既存パートナーへの支援を充実させるためだ。今回の新施策で、厳選したパートナーと関係をより強固にしようとしている。

選び抜いた13社のパートナーと蜜月に

 米デルは2007年末、「デル・モデル」と呼ばれる直販戦略から一転、ITベンダーなどを通じたチャネルビジネスもグローバルで開始した。その流れを受け、日本法人はほぼ同時期に「パートナー統括本部」と称する専門部隊を組織し、デル製品を再販するパートナー企業の勧誘に乗り出した。

 現在、グローバルでは「約1600社の認定パートナー、5万社の登録パートナーがいる」(米デルのグレッグ・デイビス・バイスプレジデント)。一方、「日本国内では13社とパートナー契約を結んだ」(日本法人の小林広高・パートナー統括本部副本部長)。その結果、デルの間接販売ビジネスは、今年度第1四半期(2~4月)で昨年同期に比べ35%伸びたという。「ブランドとプロダクトの品揃え、シンプルなパートナー制度が高い評価の理由」とデイビス氏は実績に満足している。

 今回、既存パートナーの支援策充実と新規パートナー獲得のために、パートナー支援の有力コンテンツに位置づ付けるオンラインツールを大幅にリニューアルする。日本語を含め19言語に対応し、トレーニングコンテンツやマーケティング資料など技術・販売を支援する各情報やツールを備え、07年12月からパートナー限定で提供しているが、今回初めて大幅バージョンアップする。シングルサインオンやアカウント登録・管理、検索精度の向上など操作性向上を重点に改良した。

 一方、日本のパートナーに今回初めて提供するのが「Deal Registation Tool」というツール。デルの直販部隊とパートナーの営業担当者が同じ顧客に提案することがないように案件情報を共有・管理するためのもので、世界ではすでに提供しているが、日本では今回初めて用意する。「10月末にパイロット版を提供するスケジュール」(副角和薫・パートナー統括本部副本部長)を組んでいる。

 デイビス氏は、「(認定パートナーを)グローバルで今年度末までには2000社、来年度末には4000社に増やす」計画を示している。ただ、日本では「拙速に数を追い求めない戦略をとる」(小林副本部長)。現在の13社のパートナーとの関係強化に力を注ぐ方針で、「複数のITベンダーからパートナーになりたいとの声をいただいているが、お断りしている状況。今は増やすつもりはない」(同)。まずは13社すべてで認定パートナーの教育・資格制度の最上位を取得してもらうように支援することを優先する。13社のパートナーをデルは明かさないが、商社系列のSIerや大手企業の独立系情報システム子会社が名を連ねている模様だ。


 デルは有力コンピュータメーカーのなかでチャネルビジネスでは最後発。とくに日本は富士通、NECといった国産メーカーが全国を網羅する間接販売体制を築き、他の国よりも販社を集めにくい。この状況を踏まえて、選び抜いた大手のITベンダーと蜜月関係をつくることで、1パートナーあたりの取扱量を増やして、間接販売を伸ばそうとしている。(木村剛士)

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“直販のデル”が方針転換

 デルのチャネルビジネスでは、x86サーバーやPC、ストレージ、周辺機器などさまざまな製品が流通するが、x86サーバーはそのなかでも主軸商品である。チャネルビジネスの成果を測るうえで、x86サーバーの売れ行きが一つのバロメーターになるだろう。

 ガートナージャパンの調べでは、2009年4~6月の国内x86サーバー出荷台数は対前年同期比25.8%減の9万3783台。同社が調査を始めて以来、初めて10万台を割り込んだという。すべての有力サーバーメーカーがマイナス成長に終わったが、前年同期と比べて最も販売台数を落としたのが、デルだった。

 43.6%減という数値で、順位も3位から4位に落ちた。一時は、10年以上もトップシェアの座を守る王者NECの牙城を崩さんばかりの力があったが、今その勢いは影を潜めている。直販が限界に達しているとも取れる結果が浮き彫りになっているわけだ。

 この状況を打開するための武器となるのが、チャネルの力である。とくに日本ではチャネル、いわゆる販売パートナーの力が欠かせないという特色がある。日本のユーザーは米国に比べてSIerへの依存度が高いからだ。

 米国の企業なら、小規模なシステムであればメーカーから直接ハードやソフトを購入して組み立て、利用するケースが多い。だが、日本のユーザー企業は小規模システムでもつき合いのあるSIerやITサービス会社に頼むケースが多い。つまり、製品を販売する際に、チャネルの力がよその国以上に必要になってくるのだ。

 日本では、国産コンピュータメーカーが全国を張り巡らす間接販売体制網を築いている。デルが間接販売網を築くのは他国以上に難しいが、同社の成長はチャネルビジネスがカギを握っていることは間違いない。有力ITベンダーに絞ってパートナー網を築こうとするクローズ戦略が成否を分ける。(木村剛士)