デジタルを活用したビジネス改革(デジタルトランスフォーメーション)を実践するには、まずSIer自身のビジネスモデルを変えなければならない――。野村総合研究所(NRI)は、その先陣を切る子会社としてNRIデジタルを、この8月に立ち上げた。NRIデジタルの特徴は、自らの収益の源泉を“顧客の利益創出”に求めている点である。納入したシステムを顧客と一緒に運用し、実際に利益を生むところまでがNRIデジタルのビジネスであり、生んだ利益が大きければ大きいほどNRIデジタルも儲かるモデルを基本としている。

雨宮正和
社長
 これまでのSIerは、システムを納入してから保守契約を結ぶなどして運用作業を受託することはあっても、基本的に顧客の利益に責任はもたなかった。だが、IoT/ビッグデータ分析、AI(人工知能)といった既存のビジネスを変えるツールとして注目を集める分野は、「納入しただけではほとんどうまくいかない」(NRIデジタルの雨宮正和社長)のが実情だ。そうならば、例えばIoTなら、IoTを活用したビジネスを立ち上げ、利益を生むところまで顧客とともに取り組むサービスをベンダー自らが率先して提供するべき。つまり、ユーザーのビジネスを変革するには、まずベンダーであるSIer自身のビジネスを変革するところから始めなければならない。NRIデジタルは、こうした考えにもとづいて創業した。

 NRIデジタルは(1)コンサルティング(2)ITソリューション(3)デジタルアナリティクスの三つを一体的に提供する。(1)と(2)はもともとNRIグループが強みとしている領域で、近年ではコンサルティングとITソリューションを融合させたキャッチフレーズ「コンソリューション」を前面に押し出している。NRIデジタルはシステムを納入した後、データを分析し、顧客のビジネスを新規に立ち上げたり、利益を伸ばしたりする(3)デジタルアナリティクスまで一貫して手がける点が特徴的だ。

 実は、NRI本体も(1)から(3)の一体的なサービスを展開することで、従来の基幹業務系のビジネスに加えて、新しいデジタル領域のビジネス拡大を目指している。だが、既存の基幹系ビジネスを抱えながらでは、どうしても展開スピードに限界があるため、NRIデジタルがグループの先陣を切ってデジタルビジネスに挑戦する。子会社として独立したほうが、意思決定のスピードが増すとともに、特異な能力をもつスタートアップ企業との連携もやりやすくなる。また、顧客と試行錯誤しながら「新規ビジネスを小さく立ち上げ、大きく育てる」といったアプローチにも柔軟に対応できる。

 雨宮社長は、「『成果に結びつけるサービス』こそがデジタルビジネスでは重要だ」とし、まずは、デジタルマーケティングなどでの知見を積み上げつつ、将来的には「これまでにない独創的なデジタルソリューションを創り出していく集団にする」と意気込みを語る。デジタルトランスフォーメーションは、業種・業態を問わず起こっていくとみられており、NRIデジタルでは顧客と一緒に利益を生みだす手法により、NRIグループのデジタルビジネスをリードしていく。(安藤章司)