韓国の情報セキュリティベンダー、ジランソフトは、日本でのビジネス拡大に注力している。「日本でのビジネスの成功が、グローバルでの成長の土台になる」と考えているからだ。それを表すスローガンとして「JAPAN TO GLOBAL」を掲げる日本法人のジランソフトジャパン(呉治泳社長)では、日本独特のニーズに応えた製品を開発。パートナー企業とともに、日本市場の開拓に一層力を入れている。

日本をベースキャンプに世界でのビジネス展開を狙う

 ジランソフトは1994年に韓国で創業。2004年に日本でのビジネスを開始し、11年に日本法人ジランソフトジャパンを設立した。韓国、日本のほか、米国、シンガポール、スウェーデンに拠点を構え、6社のグループ企業を含めて、現在までにグローバルで60億円の売り上げ、4万社のユーザーを抱える、韓国有数のセキュリティベンダーだ。

 ジランソフトは創業以来、「“100”という数字を3回達成する」というビジョンを掲げている。一つめが、2018年に100億円の売り上げを達成すること。二つめが、2024年に世界トップ100のソフトウェア企業になること。三つめが、2094年に100年続く企業となることだ。この目標を達成するための必要条件となるのが、グローバルでの成功。そして、「そのカギとなるのが日本市場だ」と、ジランソフトジャパンの呉治泳社長は語る。その理由として、日本市場の大きさと距離を挙げ、「日本のソフトウェア市場は、世界で3本の指に入る大きさがある。米国は最大の市場だが距離が遠く、文化も韓国とは大きく異なる。その点、日本は距離も文化も近い」と説明する。
 
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ジランソフトジャパン 呉治泳 社長

 しかしながら、日本市場の攻略は一筋縄ではいかない。「日本の市場は韓国より大きいが、3倍くらい難しい」というのが、呉社長の率直な感想だ。しかし、「海外拠点のなかでは日本の売り上げが1番大きい」という。

 「日本市場で成功すれば、知見の蓄積と売り上げの拡大が実現し、グローバル展開に向けたベースをつくることが可能になる」と話す呉社長。日本市場での成功を、グローバル市場での成功の土台に――そうした意味を込めて、ジランソフトジャパンは、コーポレートスローガンとして「JAPAN TO GLOBAL」を標榜し、日本から世界へ羽ばたく意志を示している。

日本市場独特のニーズを捉え製品を拡販する

 日本でのビジネスは、韓国で成功した製品の日本での展開や、日本向けの製品、グローバル向けの製品開発提供に重点を置く。実際に、もともと韓国で展開してきたスパムメール対策製品「SPAMSNIPER」や、日本市場向けに特化したオンラインストレージ製品「GIGAPOD」などは、日本国内においても豊富な実績を積み重ねてきた。

 なかでも現在、とくに力を入れているのが、メールセキュリティ製品の「SPAMSNIPER AG」だ。SPAMSNIPER AGは、アンチウイルス・スパム対策機能や誤送信防止機能を搭載するSPAMSNIPERに、メール無害化機能を追加した製品。具体的には、ウイルス・スパムメールの遮断や、上司承認、添付ファイル暗号化などを含む誤送信対策といった従来のSPAMSNIPERの機能に加え、メール無害化機能として、添付ファイル付メールやHTMLメールの遮断、添付ファイルの削除、HTMLメールのテキスト化、指定したサーバーへの原本メールの保管が可能になる。次期バージョンでは、ファイル無害化機能の搭載を予定。すでに開発はほぼ完了しており、「年内にはリリースできるだろう」(呉社長)としている。

 同製品は、日本国内向けとして、同社のパートナー企業であるキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)とジランソフトが共同で企画。キヤノンITSでは、かねてから、SPAMSNIPERをはじめとしたジランソフト製品の取り扱いや、自社サービスへの組み込みなどを通じて、ジランソフトとの関係を深めてきた。

 今回のSPAMSNIPER AGの提供にあたっては、「自治体セキュリティ強靭化対策」のもと、自治体で導入が進む「メール無害化」について、企業にもニーズがあると見込んだキヤノンITSが、ジランソフト側に開発をリクエストしたことにより実現した。これについて、呉社長は、「無害化は日本市場だけの特殊なニーズ。韓国にもこうした製品はないが、もともと韓国でつくった製品(SPAMSNIPER)を日本市場に向けにローカライズさせることで、単純に無害化だけを行う製品ではなく、ウイルスやスパム対策もできる製品になった」と説明する。

 SPAMSNIPER AGは、主に中規模以上の企業を中心に、SPAMSNIPERの既存ユーザーの置き換えや、他社製メールセキュリティ製品ユーザーの乗り換えを想定している。独占販売権を取得したキヤノンITSが今年2月から販売を行っているが、すでに「引き合いはかなりある」と手応えを感じているようだ。

 今後、ジランソフトジャパンとしては、SPAMSNIPER AGやグローバルで展開する製品の市場検証を行い、海外展開の土台づくりを行っていく方針。呉社長は、ジランソフトの強みは、「グループ従業員全体の7割がエンジニアで、顧客のニーズをいち早く捉え、製品
に反映できること」にあると強調。「韓国のスピード感、日本の“匠の精神”を合わせることがシナジーとなり、グローバルでの成功につながる」と、韓国と日本のコラボレー
ションで世界市場に切り込んでいく考えだ。

 「一番大きな目標は、JAPAN TOGLOBAL。それを達成するために、19年のIPO(新規株式公開)を目指す」と今後の方向性を示した。(前田幸慧)