野村不動産は、賃貸業務システムの刷新プロジェクトを推進している。賃貸業務を手がける野村不動産とグループ会社の業務担当者らが課題意識をもち、現場が中心となって業務の効率化プロジェクトを始動。システム面では、業務パッケージソフトをカスタマイズなしで導入することを目指し、グループ内でバラツキのあった賃貸業務の共通化を進めたり、パッケージに業務を合わせる作業に着手している。「働き方改革」の機運の高まりも後押しするかたちで、現場主導で業務改革に取り組む事例である。

グループ4社のボトムアップでプロジェクトを始動

現場の業務担当者が課題意識をもつ

 野村不動産の賃貸業務は、野村不動産と野村不動産パートナーズ、ジオ・アカマツ、NREG東芝不動産の4社が主に担当している。商業施設向けの賃貸はジオ・アカマツ、オフィス向けの賃貸は野村不動産パートナーズといった具合に、それぞれの得意分野を生かしながら不動産賃貸のビジネスを伸ばしてきた。

 だが、業務面ではそれぞれに違った業務フローが存在。同じ案件を各社で別々に管理していたり、システム間の連携が十分にとれていないため、データの二重入力などの非効率が目についた。

 現行の自社開発のシステムは、2000年頃に野村不動産本体の賃貸業務で使い始めたもので、あと数年で20年になる年代物。グループ会社の賃貸業務についても、基本的にはこのシステムをベースにしている。この間、賃貸業務の業務フローも大きく変わっており、既存システムでは対応が難しくなっている。ビジネスの変化に対応できない部分は、手作業になるケースもあった。「このままでは業務効率が改善しない」(野村不動産の浅川一也・都市開発事業本部業務部次長)と判断。主に賃貸業務を手がける現場の業務担当者らが集まってスタートしたのが、今回のシステム刷新のプロジェクトである。

効率化と自動化の設計思想に共感

 折しも「働き方改革」の機運が高まるなかで、現場主導のプロジェクトが動き出した。新システムの選定についても、「野村不動産グループ全体として働き方改革、生産性の向上に役立つものでなければならない」(野村不動産の根目澤和之・都市開発事業本部業務部事業会計課長)との意見に集約されていく。

 働き方改革や生産性向上は一般にトップダウンで進めるケースが多いが、今回はボトムアップ方式でプロジェクトが立ち上がった珍しいケースだといえる。

 業務効率を低下させるのは、賃貸業務を手がける主要各社で業務フローやシステムのバラツキがあるためだ。これを勘案して、グループ共通で使えて、導入後の運用もカスタマイズなしで対応できるパッケージソフトを探す方向に決まった。複数のパッケージソフトベンダーのなかから選定したのは、ワークスアプリケーションズの人工知能型ERPシステム「HUE」シリーズで、総合不動産管理システムの「HUE Real Estate(ヒュー・リアルエステート)」。
 
野村不動産
浅川一也次長(左)、根目澤和之課長

 ワークスアプリケーションズは、ノンカスタマイズのパッケージシステムの適用を一貫して提唱しており、近年ではAI(人工知能)を活用した業務の自動化にも積極的に取り組んでいる。「バックエンド業務の効率化と生産性向上を重視した設計思想が、求めていたシステムの方向性と合致していた」(浅川次長)ことが選定の決め手となった。

AI活用で業務の効率化や自動化率を高める

 パッケージソフトを業務にあてはめるとき、どうしても合わない部分が出てくる。この場合、他のユーザーにも有用な業務であれば、「できる限りパッケージの標準機能として取り込んでいく」(ワークスアプリケーションズの猪股英治・Sales & Marketing Div.マネジャー)姿勢を貫いてきた。パッケージの完成度が高まれば高まるほど、ノンカスタマイズで適用できる割合が高まるからだ。
 
ワークスアプリケーションズ
猪股英治マネジャー(左)、中嶋優氏

 パッケージの標準機能のみでシステムを稼働させられれば、当該パッケージがバージョンアップするときも、手直しすることなく常に最新バージョンが適用しやすくなる。HUEシリーズは比較的新しい製品である。日々蓄積される膨大な業務ログデータをAIが学習・分析して業務担当者のパーソナルアシスタントの役割を果たすことで、業務の自動化や効率化を実現する。「AIは日進月歩で進化しており、その研究開発の成果をHUEシリーズに随時反映している」(ワークスアプリケーションズでHUE Real Estateの開発を担当する中嶋優氏)。カスタマイズが入らないことにより、こうしたバージョンアップも容易に行える。

リソースを本業により多く割り当て

 プロジェクトでは、「HUE Real Estate」の機能と照らし合わせながら、賃貸業務の業務フローをグループで標準化するところから始まる。実質、今年度から具体的な作業がスタートしており、向こう数年で本稼働させる予定だ。

 野村不動産では、業務効率化によって生まれたリソースを、本業により多く割り振りたいと考えている。例えば今回のプロジェクトのテーマでもある「働き方改革」は、業種・業態に関係なく行われている。働き方が変わることで、10~15年先ではオフィス賃貸のビジネススタイルも大きく変化することが予想される。そうした変化を先取りしてニーズを掴んでいく。不動産の本業に一段とリソースを集中できるよう、HUEを活用した業務効率化に取り組んでいく。(安藤章司)