中国ソフトウェア産業協会(CSIA)の常務理事を務める周密氏(成都ウィナーソフト総裁兼CEO)は1月30日、コンピュータソフトウェア協会が開催したセミナーにスピーカーの一人として登壇。中国のIT産業と日中協力の現状について解説した。

成都ウィナーソフト
周密
CEO

 講演の冒頭で周氏は、「CSIAの調査では、中国のソフトウェアと情報サービス産業の収入は2018年が5.5兆元で、成長率は13.9%を記録している。産業規模が新たな段階を迎えたことで、売り上げ・利益はともに増加している」と中国のソフトウェア産業とIT産業の現状を数値で示した。これらは政府による積極的なIT優遇政策によって実現したもので、今後も継続していくとした。

 中国のIT産業で大きな収益を上げているサービスは一般消費者向けに偏っており、周氏は「基礎研究をあまり重視しないことに加え、ビジネス分野に対する行政の影響力が強い。また長期にわたって人材に余裕のある期間が続いたことでシステムによる効率化が重視されなかった」ためと分析する。人が多いだけに、システム化しなくても人の手で間に合ってしまっていたのだ。そのため「日本企業によるシステムの提供は日系企業の現地法人か外資向けへの提供がほとんどで、中国企業に導入できているのは少ないのでは」と指摘する。

 しかし、今後、この状況が変わる可能性が出てきている。まず、人件費の高騰に加え、近い将来に高齢化が始まるため、効率化への注目が集まってくるとみられる。また、企業によるインターネットコンテンツプロバイダー資格の取得が緩和される見込みもある。ビジネス向け事業の入り口が広がっているのだという。そこに入り込むための方向性として周氏は「中国は売掛金の回収が難しい市場特性があるため、SaaSによるビジネスモデルに望ましいだろう」と語る。「近年、工業情報化部が工業向けアプリケーション開発やクラウド利用の促進プロジェクトを進めている。日本企業は、中国の市場が持つ特徴をしっかり研究した上で、これまで培ってきた運営経験でサービスを提供できればチャンスがあるだろう」と呼びかけた。

 また、日中アライアンスの観点でも状況は変化していると周氏は考える。「これまで、高度な技術を持つ日本が上流工程を、賃金の安い中国が下流工程を担当するというケースが多かった。しかし、円安や中国の賃金高騰によりこの状況は一変している」。その上で「今後は新たなアライアンスの形として、マーケットを共同で開拓したり、共同で製品開発を行う可能性が考えられる。日本の高度な技術や経験、匠の精神を、中国が持つ一帯一路のフレームワークや巨大なリソースと掛け合わせることで新たな価値を生み出せる」と強調した。

 講演の最後に周氏は「技術先行になりがちな中国は、ニーズベースの日本に学ぶべき点は多い。toC分野に優位性がある中国とtoBに長年の蓄積を持つ日本、その上両者は人材不足という共通の課題を持っている。協力できる領域は非常に多いだろう」と締めくくった。(銭 君毅)