KDDIはデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を支援するビジネスを強化した。同社はDX支援などをメインとした「NEXTコア事業」の拡大に注力しており、2021年度(22年3月期)第1四半期の同事業の売上高は前年同期比で18%増と好調に推移した。この流れを加速させるために、セキュリティ、リカーリングビジネス、5Gでそれぞれ新たな取り組みを開始することを明らかにした。通信をメインとした「コア事業」と合わせた法人事業全体の21年度の売上高は1兆200億円を見込んでおり、そのうちNEXTコア事業の売上高を3割超まで引き上げたい考えだ。(岩田晃久)
NEXTコア事業は、社内業務をはじめとした働き方を支援する「コーポレートDX」、既存ビジネスのデジタル化を支援する「ビジネスDX」、データセンターなどの「事業基盤サービス」の三つの領域から成る。同社の森敬一・取締役執行役員専務ソリューション事業本部長は「コーポレートDXとビジネスDXは新しい領域としてビジネスを加速させている。両事業の今年度売上高は前年度比で20%超の成長率となる見込みだ」と手ごたえを語った。
森敬一取締役(左)と藤井彰人執行役員
コーポレートDXでは、「オペレーション」「クラウド・アプリ」「セキュリティ」「ID」「ネットワーク」「デバイス」の六つのコンポーネントで構成するソリューション「マネージド ゼロトラスト」を強化。具体的にはセキュリティコンポーネントの新サービス「KDDIマネージドセキュリティサービス」を10月1日にリリースした。
同サービスはセキュアWebゲートウェイ「Zscaler」とEDR「Microsoft Defender for Endpoint」を利用している企業が対象で、KDDIが独自開発したログ基盤に、ラックの自動分析エンジンを搭載し、各セキュリティ製品のログを自動分析する。加えて、問題が起きた際は、KDDIとラックの合弁企業であるKDDIデジタルセキュリティのアナリストが調査・分析を行う。
同社の藤井彰人・執行役員ソリューション事業本部サービス企画開発本部長は「マネージド ゼロトラストを提供する中でセキュリティの運用を課題とする企業が多かったため、新サービスを開始する」と説明した。
一方、ビジネスDXでは、企業のリカーリングビジネスの実現を支援する「KDDIリカーリングビジネスプラットフォーム」構想を推進しており、9月28日に新サービスとして顧客ID管理サービス「KDDI IDマネージャー」を開始した。KDDIは既存ビジネスで3000万超のIDを管理しており、その認証技術と運用ノウハウをサービスとして提供する。顧客のID管理に課題を抱えるBtoC企業などでの利用を見込む。
加えて、富士通と5G領域で業務提携を結んだ。KDDIの「au 5G」と富士通のローカル5Gを相互連携させ、通信基盤「5G Service Platform」の開発に向けた技術実証を開始したという。