JTOWERと住友電気工業、日本信号、NECの4社は8月22日、産官学で連携する新組織「交通インフラDX推進コンソーシアム」の設立発表会を開催した。人とモビリティ、インフラが協調した安全安心で持続的な交通社会の実現が目的。交通信号機の活用による、5Gネットワークを軸とした柔軟性と拡張性を兼ね備えた新たなDX基盤やアプリケーションの社会実装を検討していく。
コンソーシアムには29団体が参加する。初年度は普及促進委員会でニーズを整理し、関係省庁や自治体と調整して事業モデル案を作成。並行して技術検討委員会でサービスやアプリ基盤を検討し、制度や運営上の課題を整理していく。個別のテーマでは「柱の高度化(5Gネットワークを軸としたDX基盤の整備)」「交通管制・信号情報配信」「データ利活用ニーズへの対応」に取り組む。
大口 敬 会長
会長に就任した東京大学の大口敬教授は「社会課題の解決には都市のDX化が重要で、そのために人が移動する空間の5Gエリア化は不可欠。センサーを設置して得られるデータをAIで解析し、利活用することは多角的な社会貢献につながる」と説明した。
特別顧問を務める慶應義塾大学の村井純教授も交通インフラDXがもたらす社会価値の範囲の広さを強調し、「道路交通だけでなく、災害対策や防犯、環境負荷軽減など幅広い社会課題解決につながる」と期待を寄せた。また、これまで社会実装にブレーキをかけていた行政によるルール変更に着手できることも新たなメリットに挙げ、「こうした取り組みをしている国はまだ世界でも限られている。日本から世界に発信する社会課題解決モデルケースにしていきたい」と将来的なビジョンを語った。
コンソーシアムは、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)において行っていた「交通信号機を活用した5Gネットワークの構築(信号5G)」に関するプロジェクトが前身。プロジェクトは2019年から、交通信号機への5G基地局の設置による5Gエリアの拡充と交通信号機の集中制御化の促進に向けて、技術や制度の検討を重ね、21年に役割を終えた。成果はコンソーシアムが引き継ぎ、信号5Gの価値最大化に向けて活動する。
(大蔵大輔)