エプソン販売は、月額定額でカラーインクジェット複合機が使える「エプソンのスマートチャージ」の製品ラインアップに毎分40~60枚のA3対応の中速機「LMシリーズ」3機種を加える。スマートチャージシリーズで中速機を投入するのは今回が初めて。料金は月額3万5000円(税別)からで、販売開始は2023年2月上旬を予定している。主な販売対象は複合機の主戦場である一般オフィス市場。競合他社のレーザープリンタ方式に比べて、大幅に消費電力が少ないインクジェット方式の強みを生かして顧客企業の脱炭素や環境経営の需要に応え、オフィス市場でのシェア拡大を狙う。
(安藤章司)
エプソンのスマートチャージは、いわゆる月額定額で使えるサブスクリプション方式で、14年のサービス開始以来、毎分25枚の低速度帯と毎分100枚の高速度帯を投入してきた。低速機は中小事業所や現場で使うプリンタとして販売が進み、高速機は学校向けの料金プランと組み合わせ、文教市場でシェアを獲得してきた。しかし、複合機の一大市場である一般オフィスのボリュームゾーンは毎分40~60枚とされ、スマートチャージではオフィス需要の大きい中速機は投入してこなかった経緯がある。
手前からエプソン販売の鈴村文徳社長、
セイコーエプソンの久保田孝一専務、山田陽一執行役員
今回、一般オフィス市場を強く意識した中速機のLMシリーズ3機種を投入する背景には、脱炭素をはじめとする環境経営の需要が高まり、オフィスの消費電力の10%程度を占めるとされるプリンタや複合機の省電力化で「インクジェット方式が有効な手段となる」(セイコーエプソンの久保田孝一・代表取締役専務執行役員営業本部本部長)ことが挙げられる。セイコーエプソン社内で検証したところレーザープリンタからインクジェットに置き換えるだけで消費電力を8割削減でき、これに伴って脱炭素にも役立つことが判明している。
セイコーエプソンの山田陽一・執行役員プリンティングソリューションズ事業本部副事業本部長Pオフィス・ホーム事業部長は、「部品点数の削減で消耗品の数を減らしたり、小型化したりするのもインクジェット方式のほうが有利」と指摘。今回投入するLMシリーズでは従来機に比べて設置面積を約35%削減している。
オフィス市場ではキヤノン、富士フイルムビジネスイノベーション、リコーの大手3社を中心に激しい競争環境にある。そうしたなかでも「主要な複合機ベンダーで省電力のインクジェット方式を前面に押し出しているのは当社が唯一」(久保田専務)であることからシェア拡大が可能だと見ている。同社では26年までにレーザープリンタの販売を終了し、すべてインクジェット方式に移行する目標を立てる。北米市場では、すでにインクジェットに一本化させており、国内と欧州、アジアの一部で残っているレーザープリンタのインクジェットへの切り替えを加速させる。
エプソン販売の鈴村文徳社長は、「LMシリーズの投入によって、大口市場であるオフィスでのシェアを伸ばし、国内法人向け市場で25年までに5%程度のシェア獲得を目指す」と話す。販売施策では、省電力のインクジェットの強みを生かし、環境経営や脱炭素の切り口で顧客企業に提案できるパートナーとの関係強化に努める。直近では「二酸化炭素排出量の可視化サービス」を手掛けるパソナグループのキャプランとの協業を発表。ほかにも、再エネ活用や経営コンサルティングといった環境経営や脱炭素を推進する会社との連携を強化することで販売チャネルの多角化を推し進める。