SmartHRは3月14日の事業戦略発表会で、今後は「マルチプロダクト戦略」で成長を目指す方針を示した。得意とする労務管理領域に加え、ニーズが高まっているタレントマネジメント領域のビジネスも伸ばしたい考えだ。販売面では、力を入れている間接販売で一定の成果が出ているとし、引き続きパートナービジネスに注力するとした。
(左から)倉橋隆文取締役COOと芹澤雅人代表取締役CEO
マルチプロダクト戦略を支えるのは、「数年前から研究開発を進めてきた」(芹澤雅人代表取締役CEO)というプロダクト基盤だ。UIコンポーネントや権限、IDの両基盤、従業員データベースを包含しており、効率的な開発と、統一されたユーザー体験の提供が可能になるという。
同社は毎年、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」の新機能を提供してきた。直近は人的資本経営への注目の高まりから、市場が拡大しているタレントマネジメント領域を強化している。2023年中に提供する新機能では、保有資格の状況などを可視化できる「スキル管理機能」がある。矢継ぎ早に機能を拡充するのは「事業領域をスピーディーに拡大するために、同時並行で(新しい機能を)どんどんつくっていく」(芹澤CEO)との狙いがあるからだ。
労務管理領域では、市場で大きなシェアを獲得し、年々、拡大を続けている。理由について倉橋隆文・取締役COOは「労務管理とタレントマネジメントの両方を持っていることを評価されるケースが非常に多い」と強調した。一方で、国や調査会社のデータを基に算出したデータとして「企業における労務管理クラウドの浸透率は3%程度で、まだまだ成長余地は大きい」と推定し、投資を続けてさらなるシェア拡大を狙う考えを示した。
同社はこれまで、直接販売で導入を拡大してきた。この約1年は、直販で接触できなかった企業に加え、地方の企業にも効果的に導入を進めることを目的に、パートナービジネスを展開。地方銀行の紹介に基づく案件獲得に加え、代理店との関係強化を進めている。
芹澤CEOは「代理店が受注まで担うビジネスについて、各代理店と密に連携しながら模索している」と現状を説明。「パートナービジネスは盛り上がっているため、試行錯誤しながら伸ばせるところまで伸ばしたい」と述べた。
発表会ではこのほか、15年11月のサービス開始以来、足元のARR(年間経常収益)が100億円を突破と紹介した。ARRが一定額を超えた段階から毎年、3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と増えるSaaSビジネスの成長指標「T2D3」を22年4月に達成したことも示し、「世界的にSaaS企業はいろいろあるが、そういった企業と比較しても引けを取らない成長スピードになっている」と胸を張った。
(齋藤秀平)