アイティフォーが開発する小売店舗向けキャッシュレス決済端末の累計受注台数が14万台を超えた。前年度(2023年3月期)末の11万6000台から約2万4000台を積み増しており、「今後も受注の伸びが見込める」(河野一典・執行役員決済ビジネス事業部長)と手応えを感じている。キャッシュレス決済サービスを手がける地方銀行やカード会社などとの商談が依然として活発であることや、Android OS搭載端末の投入によってAndroid対応POSや、会計などの業務アプリと決済端末を一体化するビジネスが見込まれることが販売増の背景に挙げられる。
Android OS搭載のキャッシュレス決済端末
キャッシュレスで支払う割合が高まっていることを受けて、アイティフォーが納入した決済端末を使った決済金額も増えている。23年1~12月のクレジット決済金額をベースとした流通取引総額は前年比1.5倍の約4850億円に達した模様。実際はこれに交通系ICカードや二次元バーコード決済などが加わるため「流通取引総額はより大きくなる」(河野執行役員)という。旺盛なキャッシュレス需要に応えるため地域の小売店向けに、新たにキャッシュレス決済サービスを始める地銀が増える見通しであることから、引き続き、端末の販売増や決済金額の増加を見込んでいる。
河野一典 執行役員
アイティフォーでは、本年度からAndroid OSを搭載した新しい決済端末の受注を始めており、「早ければ24年1月から順次小売店に出荷を始める」(河野執行役員)予定だ。Android OS搭載端末は、スマートフォンと同様にさまざまなアプリを動かすことが可能で、従来のキャッシュレス決済の「マルチ決済端末」の機能に加えて、「マルチ業務アプリ端末」としても活用できるようになる。同社では商品管理やPOSといった小売業向け業務アプリをパッケージ化した「RITS(リッツ)」を長年にわたって開発しており、このノウハウを生かしてAndroid OS搭載端末向けの商品マスターやPOSアプリの開発を検討している。
現状、キャッシュレス決済の金額については決済サービスを提供している金融機関などから把握できるが、現金で購入した金額については分からない。決済端末をPOSと兼用することで、現金での購入分を含めたカネの流れの全体像を把握しやすくなる。
また、POSは商品マスターと連動していることから「どんな商品が、どこで、いくらで売れたのか」を、決済システムや小売業向けアプリを提供しているアイティフォー側で把握することが可能になる。「金融機関などが地域経済の商圏分析の用途でPOSの販売データを必要とするケースは存在する」と、河野執行役員はみており、将来的にPOSデータの分析をもとにした地域の小売市場の活性化に役立てるサービス開発も視野に入れる。
(安藤章司)