EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、文書や映像、音声の波形などを組み合わせたマルチモーダル生成AIを活用した技術支援コンサルティングサービスを4月1日に始めた。これまで文書だけ、画像だけのシングルモーダルな生成AI活用が多かったが、複数モーダルを融合させることで「人間の五感により近い認識を生成することが可能となる」(山本直人・テクノロジーコンサルティングAI&Dataパートナー)と、企業の価値創造を担う企画部門や研究開発部門で役立つとみている。
山本直人 AI&Dataパートナー
マルチモーダルAIに着目した背景には、人の認知能力を超えるAIの特性が挙げられる。人は少ない情報をきっかけに過去の記憶や経験を基に直感的に物事を判断・認識する能力には長けているが、大量の情報は処理できないなど、能力の限界がある。「マルチモーダルAIはこの部分を補える」(同)と指摘。具体的には、雑踏の映像や音声波形などの大量なデータの集まりから瞬時に傾向を読み取ったり、文書に要約したりできる。継続的に認識・分析可能な点も強みだ。
業務への応用では、マーケティングや新規商品・サービスの開発部門で役立つことが期待されている。例えば、ネット通販では草創期から顧客の画面遷移やクリックした箇所を記録し、顧客の嗜好を分析する仕組みが実用化されており、マルチモーダルAIは「現実世界でも同じように大勢の人の動きから個人単位の嗜好を浮き彫りにできる」(同)と、現実世界でもネット通販と同じように個人の追跡が可能になるという。
新坂上 治 統括パートナー
既存のAI活用はチャットボットや議事録の要約など業務効率化の用途がメインだったが、マルチモーダルAIでは新規事業の創出につながる支援サービスに力点を置く。新坂上治・テクノロジーコンサルティング統括パートナーは「国内のAI技術部門は現在100人規模だが、早急に200人体制へ拡充する」と、人員を増強してマルチモーダルAIを活用した事業創出の支援サービスを伸ばしていくとしている。
(安藤章司)