オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、クラウドビジネスの拡大に向け、UX(ユーザー体験)を2024年のテーマに設定した。オンプレミス製品と同等の機能を実現したSaaS型ERP「奉行V ERPクラウド」を軸に中堅・上場企業へのアプローチを加速させ、これまで注力していきた中小企業への導入と併せてさらなる成長につなげる考えだ。
(齋藤秀平)
和田成史 社長
「24年は奉行V ERPクラウドの導入を積極的に進めていきたい」。6月11日、東京で開催したパートナー向けのイベントで、和田成史社長はこのように呼びかけた。
和田社長が奉行V ERPクラウドの拡販を宣言した背景には、オンプレ製品との機能差を解消し、中堅・上場企業にもSaaS型ERPを本格的に提供できる準備が整ったことが背景にある。
ただ、市場ではSaaS型ERPは多様化しているほか、テクノロジーの進化も急速に進んでいる。こうした状況を踏まえ、OBCは、機能だけでは製品を選べない時代になっていると分析し、顧客からのニーズが多い運用プロセスに焦点を当てたUXを新たな価値として提供する方針を打ち出した。
OBCは、クラウドビジネスでもパートナーとの役割分担と協力体制を重要視しており、奉行V ERPクラウドを通じて顧客に最適なUXを届けるためには、引き続きパートナーの存在が欠かせないとみる。
奉行V ERPクラウドに対し、パートナーからの注目度が高いのは、ノーコード/ローコードツールの活用だという。これまでのERPでは、業務に合わせてアドオンを追加開発する手法が一般的だったが、奉行V ERPクラウドでは、外部アプリを組み合わせる「Fit to Standard提案」を選択肢として提示。7月までに全8社のツールと接続できるアダプターを整備し、パートナーのビジネスを後押しする。
このほか、本稼働前に半年間の準備期間を設けてスムーズな導入を可能にするサービスや、パートナーが用意したデモ環境から顧客の本番環境に移行できるツールを用意している。
和田社長は、OBCによる支援策だけでなく、オンプレ製品の導入で培ったパートナーの豊富な知見も差別化要素になるとし、奉行V ERPクラウドのビジネスについて「勝算は高い」と自信を見せる。
中小企業向けも含めた23年度のクラウドビジネスの売上高は、前年度比約63億円増の約190億円で、全体の売上高に占める割合は、7.8ポイント増の45.3%となった。24年は、サポート終了の時期を4月から12月に延長したオンプレ製品「奉行10シリーズ」の新システムへの移行がビジネスチャンスになる見通しで、クラウドビジネスの売上高の割合はさらに高まる可能性がある。
和田社長は、クラウドの領域では「主な製品は出し切った。これからは各製品を磨き、育てていく段階だ」と説明し、「クラウドビジネスでは、製品を採用していただくことに加え、お客様の満足度を高めて、長く使っていただくことも重要になる。お客様が価値を享受すれば、われわれとパートナーの収益にもつながるため、成長を継続させて三方良しのビジネスを目指していきたい」と意気込んだ。