農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は10月18日、記者説明会を開き、農業に特化した生成AIを開発したと発表した。農業従事者の生産性を向上し、新規の就農者の育成を加速させることが目的。10月21日から三重県のイチゴ栽培で試験運用を開始する。全国への普及も狙う。
生成AIは、EYLYZAが提供する大規模言語モデル(LLM)をベースとし、インターネット上の公開情報に加え、全国の農業機関から提供された生産現場の栽培技術や農研機構が持つ専門的な栽培知識を用いて追加学習して開発。栽培に適した温度の提案など具体的な回答ができるという。
久間和生 理事長
農業情報は、気候が例年と違ったり、農家が固有の品種を栽培していたりするため、実効性を伴う回答の生成に必要なデータは、地域によってばらつきがある。今回開発したのは全国で使える農業に関する一般的な知識に対応するLLMで、今後は各都道府県から地域特性を反映したデータの提供を受けて追加学習を実施し、よりローカルなLLMを開発した上で、それぞれの都道府県に展開する計画だ。すでに10ほどの都道府県とデータ提供に関する契約を結んでいるという。
三重県での試験運用では、開発したLLMをチャットツールと組み合わせて活用する。ユーザーとしては農業従事者に技術指導を行う国家資格を持った普及指導員を対象とし、指導の準備にかかる時間の削減や、現場で臨機応変に対応できるように支援する。
将来的には技術支援員だけではなく、現場の農業従事者も直接使えるようにする方針。また新たに農業経営、販促や広報に特化したLLMを開発するほか、画像生成AIも組み合わせる。これに伴い、学習に使うスーパーコンピューターの能力を4倍に拡大する。久間和生理事長は「生成AIを用いた農業、食品産業を研究開発で終わらせず、産業に結びつけたい。農研機構が音頭をとり、さまざまな関連機関のハブの役割を果たす」と意気込みを示した。
(大畑直悠)