顧客エンゲージメントプラットフォーム開発の米Twilio(トゥイリオ)日本法人は、SaaS・パッケージソフト開発ベンダーやSIerと連携した間接販売チャネルと、直販の両方を重視したハイブリッド戦略を展開する。国内有力ソフト開発ベンダーにAPIを通じてTwilioサービスを組み込んでもらうとともに、Twilioを組み込んだ商材をSIerが販売しやすい環境づくりに取り組む。ユーザー企業にTwilio製品ロードマップや開発方針を理解してもらうために、日本法人による直販も取り入れて販売促進に努める。
久保 敦 社長
同社はインターネット通話サービスで成長してきた会社で、近年は生成AIや顧客履歴などのデータをもとにした分析を組み合わせ、より満足度の高い顧客体験を提供するプラットフォームづくりに力を入れている。AIやデータ活用のソフトウェア部品を多数開発しているが、「主にソフト開発ベンダーやSIerにソフトウェア部品として使ってもらうことを想定している」と、日本法人の久保敦社長は話す。
直近では、電話の音声自動応答システム(IVR)を開発するIVRyや、サイバーエージェント子会社で顧客サポート向けチャットボットサービスを開発するAI Shift、顧客とのマルチチャネルAIチャットボットを開発するモビルスといった、主に顧客接点の領域に向けたシステム開発を手掛けるソフト開発ベンダーがTwilioサービスやソフト部品を活用している。
また、SIerがユーザー企業の顧客接点領域のシステム構築を手掛ける際は、売れ筋のSaaSやパッケージソフトを取り入れて実装するケースが多いことから、「Twilioのサービスをソフト開発ベンダーの製品に組み込んでもらい、それをSIerが取り入れて客先に実装する販売チャネルを充実させていく」(久保社長)方針。
日本法人の足元の売上構成比を見ると、従来型のネット通話サービスの比率が依然として大きいという。国内外の主要な電話会社と相互接続するトゥイリオの従来からの強みを生かしつつも、「顧客エンゲージメント全体をカバーする現在のトゥイリオの強みをユーザー企業に直接知ってもらうための直販にも力を入れる」(同)。
ビジネスパートナーに頼るだけでなく、国内従業員の数を増やし、自ら販促活動に乗り出すことでAIやデータ活用ビジネスの比率拡大に弾みをつける構え。ただし、トゥイリオ自身の最終製品は多くないため、実際はユーザーの指名買いを促し、SIerやソフト開発ベンダーに協力してもらいながら構築していくケースが多いと見られる。
2024年12月期のトゥイリオグループ全体の売上高は前年度比7%増の44億6000万ドル(約6500億円)で、うち日本法人の売上高の伸び率はグループ全体より大きいという。25年12月期もグループ全体を上回る伸び率の達成を目指す。
(安藤章司)