ソフトウェアの第三者保守サービスを提供する米Rimini Street(リミニストリート)が国内で事業を伸ばしている。独SAP(エスエーピー)のERP製品や米Oracle(オラクル)のDB製品を中心に利用が増えていることに加え、直近では「VMware」の仮想化製品の保守サービスへのニーズが高まっている。日本法人である日本リミニストリートの脇阪順雄社長は「これまでと変わらない価格で保守を提供することで、顧客が何に投資するのかIT戦略を判断する時間の猶予を提供したい」と第三者保守の意義を訴える。
(堀 茜)
幅広いソフトウェアに対応
同社がサポート対象としているベンダーは、エスエーピー、オラクルに加え、米IBM(アイビーエム)、米Microsoft(マイクロソフト)、米ServiceNow(サービスナウ)など幅広い。第三者保守に対応する要件としては▽契約上、第三者保守サービスを提供できるソフトウェアである▽テクノロジー的にサポートに対応するアーキテクチャーがある▽サポートするためのエンジニアを採用できる─の3点があり、これらを満たせる場合にサービスを提供している。
脇阪順雄 社長
対象ソフトウェアは拡大しており、VMwareの仮想化ソリューションは、当初要望があった顧客へ個別に対応していたが、ニーズが高かったため標準サービスに昇格した経緯がある。脇阪社長は「当社はソフトウェアベンダーの知的所有権を侵害せずに保守サービスを提供する確たるプロセスを持っている」と説明する。
リミニストリートは第三者保守を起点とした企業変革の方法論となる「Rimini Smart Path」を提唱している。第三者保守によってアップグレードやシステム移行に必要な費用を抑えるとともに、システムの効率化によって業務改善を実行し、それらで浮いた資金や人材などのリソースをもってイノベーションを進める流れだ。リミニストリートは保守サポートからセキュリティーの担保まで一気通貫でソリューションを提供し、変革を支援している。本社は2018年以降、年平均成長率14%でビジネスを伸ばしており、日本法人も同様の成長傾向になっているという。
第三者保守へのニーズが高まっている一因として、脇阪社長はソフトウェアベンダーがサブスクリプション型のビジネスに移行していることを挙げる。「ベンダー側の都合でライセンス体系が変わっても、ユーザーにはユーザーのプライオリティーに基づく投資判断が求められる。当社の保守サービスを通じて、ユーザーはIT戦略を決定する時間的猶予を得られる」と説明する。
引き合いが増えているVMware製品の場合、企業が従来支払っていた費用と同等の金額で、5年間の保守サービスを受けられる。その間に仮想化基盤の再検討を行うニーズが強いという。
もう一つの理由として、ソフトウェアのバージョンアップに対する負担感が強まっている点も指摘する。例えば、国内企業が導入している割合が高いエスエーピーのERPは、「ECC6.0」の標準保守期限が27年となっているが、クラウド版の「S/4 HANA」の20年以前のバージョンは、さらに早いタイミングの25年で保守が終了する。脇阪社長は「こちらも大きな問題だ。バージョンアップに何十億、何百億円も掛けるのであれば、ビジネス成長の部分に投資したいというニーズは高い」と顧客から寄せられる声を明かす。
リミニストリートのサービスは、ERPなどのアプリケーション製品向けとDB製品向けの二つが大きな柱となる。DB製品でシェアが高いオラクルの場合、クラウド化の流れもあり、高額な保守料を支払ったり、バージョンアップしたりするより、第三者保守を利用している間に、データ基盤の戦略を考えたいという要望に応えているとする。
脇阪社長は「第三者保守には『塩漬け』というイメージを持つ方もいるかもしれないが、実際は限りあるIT資金をどこに投資するか、優先順位を考えて、当社を選んでいただいている顧客が大半だ」と強調する。
IT戦略のコンサルサービスも
同社が新たに事業の柱として力を入れているのが、顧客企業のIT環境全体を支援するコンサルティングサービスだ。第1弾としてスタートしている「ITロードマッピングサービス」は、企業のシステムをどのような順で変革していけばいいかアドバイスする。「ソフトウェアベンダーは、最新バージョンにアップデートすることを前提としており、そのために巨額の費用と長い期間がかかってしまうが、当社はベンダーに忖度することなく顧客が本当に必要とするものを提案できる」(脇阪社長)ことを強みとする。
販売はほぼ直販で行っている。SIerから第三者保守サービスについて問い合わせは増えており、SIビジネスにエンジニアを一緒に投入して案件ごとに協業する事例などは出てきているものの、再販パートナーは現状ではいない。
脇阪社長は「フェアな立場で自社と自分たちの顧客の利益を最優先しようというSIerがいれば一緒にやっていきたい」と展望。「多くの企業にとって有効な選択肢の一つとして第三者保守を活用いただけるように、国内でのビジネスを伸ばしていきたい」と話す。