IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~

<IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~>第2章 19.家庭のIT化

2002/01/14 16:18

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 家庭生活のIT化を大きく推進すると期待されている情報家電――。その実用化に向けた2つの研究プロジクェトが経済産業省の主導で進行している。

 1つは、昨年12月から一般家庭にホームサーバーをもち込んで、まさにいま実験が進行中の「情報家電実証実験プロジェクト」。テレビやエアコンなどの家電機器をネットワーク化してまずは使ってもらい、そこからフィードバックされた成果をもとに操作性に優れたマン・マシン・インターフェイスを開発するというもの。どちらかと言うと、ハードウェア寄りの研究と位置づけることができる。

 もう1つは、昨年7月に設置されて活動が始まっている「IT from the Home研究会」である。02年度からは、健康と教育の2つのテーマで実証実験をスタートする予定だ。ITを使って家庭向けにどんなサービスを具体的に提供できるかを探るのが狙いで、ソフトウェア寄りの研究と言える。

 最初の実証実験については、すでに前号のBCNで詳しくリポートした。異なるメーカーの情報家電機器でキチンと相互接続性を確保するための「オープンプラットフォーム環境」を確立。テレビ、ビデオ、エアコン、照明器具などを1台のホームパネルを使ってコントロールする実験が行われている。子どもやお年寄りでも、マニュアルなどを読まなくても操作できるようにインターフェイスを工夫している。

 一方、IT from the Home研究会は、昨年6月に策定された「e-Japan2002プログラム」に盛り込まれた「e!プロジェクト」を受けて発足した。

 IT革命の果実を実感できるような成果を具体的に提示するというe!プロジェクトの主旨を踏まえて、家庭におけるIT化によってどのようなサービスが可能になるのかを具体化するのが目的だ。

 「家庭ではこれまでほとんどIT化が進んでいなかった。それで多くの人が別に困っていたわけではないので、家庭のIT化といってもその実感を味わいにくい面がある」(経済産業省商務情報局情報通信機器課・井草真言課長補佐)。

 家庭におけるIT化が実現すると、どんな新しいサービスが提供できるか。その可能性を具体的に示すことで、新しいビジネスチャンスに挑戦する企業の意欲を引き出そうというわけである。

 そこでポイントとなるのが、消費者にとってより便利で使いやすいサービスを提供するために、ネット上で異なる企業のサービスを融合したり、結合したりできるようにするための基盤づくりだ。

 02年度からスタートする実証実験で取り上げる健康・医療分野のサービスを例にとると、個人の蓄積された健康管理データベースを基に、医師がそれを閲覧してテレビ電話で問診するサービスや、個人の健康状態に合わせた健康メニュー料理情報をアドバイスするサービス、その情報に基づいた料理素材の宅配サービスなど、さまざまなサービスが考えられる。

 それらのサービスを、バラバラに提供するのではなく、代金決済まで含めて利用者のニーズに合わせてパッケージ化して提供した方が、より便利で使い勝手の良いサービスになる。

 「データのやり取りやセキュリティ対策など、面倒な部分はB(ビジネス=企業)とBで調整して、C(コンシューマ=消費者)にはトータルなサービスが提供されて初めて、家庭におけるIT化の果実を実感できるのではないか」(井草課長補佐)というわけだ。

 実証実験には、いろんなジャンルの企業が参加する予定だ。健康関連の実験では、NTTドコモ、日立、日本IBMなどのIT系企業のほかに、花王、ニチイ学館、総合警備保障、ヤマト運輸、味の素などが参加する見通しだ。また、教育分野の実験では、富士通、松下電器産業のほか、コンテンツ提供事業者の参加を幅広く呼びかけていく。
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