WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第118回 Itanium2を静観

2002/08/26 16:04

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

 インテルが02年7月初旬、同社64ビットプロセッサの第2弾「Itanium2(以下It.2)」をわが国を含めて世界で発売した。わが国同様IBM、デルなどは米国でもIt.2サーバー販売を当面見送る姿勢だ。(中野英嗣●文)

様子見の米IT業界

 02年後半にはAMDも同社初の64ビットプロセッサ「Hammer」を発表する。IBM・IAサーバー担当副社長D.アドバーニ氏は「IA-64サーバー需要が高まり始めるのは03年後半から04年にかけてだ。そのとき主力IA-64はIt.2ではなくその後継『Deerfield(開発コード)』になる。インテルサーバーで32ビットと64ビットの主役交代が実現するのは05年から06年にかけてだ。その後は急速にIA-64サーバーのシェアが上昇する。従ってIBMはLinuxとUNIX共用の『AIX5Lフォー・IA-64』もリリースするが、IA-64Linuxサーバーが普及し始めるのも04年以降と考える」と説明した。

 米HPはIt.2サーバーを発表したが、当面量販は期待しないと同社グローバル・チャネル責任者J.ギア氏は次のように語る。「当面、米SIerはIA-64サーバーでは量販を狙わず、付加価値の大きな特定ビジネスアプリケーション市場開拓を目的とする。わが社はサンの64ビット・ローエンドサーバー販売実績の多いSIerがサンからインテルに乗り換えることも狙ってIt.2サーバーを発表した」米国チャネルのIt.2サーバー販売への対応も二手に分かれる。米CRNの203社SIer調査によると、1年以内に同サーバー販売を開始するとの回答は20%に過ぎず、逆に1年以内には販売開始しないとの回答は約2倍の38%に達し、42%は不明と答えた。

 一方、パソコンの世界的低迷で02年も厳しい決算を迫られつつあるインテルはIt.2拡販に躍起だ。IBM、デルなどがIt.2サーバー販売を控えている間は、米国では相変わらず人気の高いホワイトボックスサーバーにIt.2拡販を期待している。インテルはSIer組み立てホワイトボックス向けIt.2サーバーのマザーボード、ベアボーンシステムを02年後半から出荷すると発表した。このボードでは4-Wayサーバーまで組み立てられる。またインテルは当サーバー立ち上げには64ビットアプリケーション拡充が重要だと考え、SASインスティチュート、SAP、i2テクノロジーズなど有力ISVに64ビットへ自社パッケージ移植を急ぐことも要請した。

 しかし、ホワイトボックスでは圧倒的にSMB(中小企業)ユーザーが多い。SMBで直ちに64ビットの処理性能を要求するようなアプリケーションは少ない。さらにホワイトボックス・ユーザーはその低価格性を最も重視するので、価格的魅力のないIt.2のホワイトボックス市場は当面拡大しないと考えるホワイトボックスビルダーも多い。そうなるとインテルは当面It.2サーバーを販売するNEC、日立製作所など日本勢とHPに期待せざるを得ない。

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