変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>情報システムの入札

2002/09/02 16:18

週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載

 8月21日、公正取引委員会は、「平成14年度の入札談合防止に関する発注官庁等との協力・研修について」というタイトルのプレスリリースを発表した。これは第154回通常国会において成立した「入札談合等関与行為の排除および防止に関する法律」を受けて実施するもので、鈴木宗男議員の問題を代表とする官民の癒着体質を是正することを狙ったものだ。しかし、肝心のIT入札については依然として透明性の高い入札が行われているとはいえない状況が続いている。

依然として厳しい評価

 「問題になっている建設関連以前の問題をIT入札は抱えている」――。IT入札の問題点を取材していく中で、関係者が口を揃えてこう話す。

 問題点のひとつとして、「官公庁や自治体側に、ITの専門家が不在であること」があげられる。専門家が不在のため、入札に参加したシステムの評価が行えない。そのため、落札の評価ポイントとして価格が重視されることになる。今年度から、ライフサイクルベースでの価格評価など政府調達制度の変更が実施されたものの、入札されるシステム自身への評価という問題はまだ改善されたとは言い難い。

 「技術進化が速いITを正統的に評価する仕組みをもつことは難しい」と官公庁側は指摘する。これに対して、「建設・土木ではすでに確立している設計業者と施工業者の分離をIT入札でも実施すれば、問題の多くが解決するのでは」という意見がある。

 設計と施工をひとつの業者が行うと、自分達に都合のよいシステムばかりが提案されてしまう。しかも価格優先で落札業者が決定すれば、情報システムの質は全く考慮されないことになってしまう。この点を改善するために、設計と施工を別業者が行うことにすれば、「極端に質が劣るプランを業者が出してこなくなる。改善されたとはいえ、情報システムの入札制度はまだまだ大手ベンダーに優位だ」と、設計と施工の業者分離をアピールする人は主張する。

 「マスコミは安値入札ばかりを問題点としてクローズアップしているが、そうなっている背景にまで踏み込んだ改革がなされなければ、真の改善は実現しない。例えば、改善が進んだといっても、情報システムの政府調達の現状は中小の業者は参加しにくい状況が続いていることがその現れでは」といった厳しい声が続く。

 「このままでは、2005年に世界最先端IT国家になるという目標の実現は難しいといわざるを得ない」という声さえも出ている。(三浦優子)
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