WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第130回 デル、次の一手

2002/11/18 16:04

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

 パソコン、インテルIAサーバーで独走を続けてきたデルの勝因は、自らの利益率は落さずに繰り返し値下げ断行によって、価格破壊を自ら演出する経営モデルにある。このデルが次の一手として狙うのは、ITサービスの価格破壊だ。

サービスのコモディティ化

 パソコン、インテルIAサーバーで独走を続けてきたデルの勝因は、自らの利益率は落さずに繰り返し値下げ断行によって、価格破壊を自ら演出する経営モデルにある。このデルが次の一手として狙うのは、ITサービスの価格破壊だ。デル売上高は312億ドル(3兆7000億円、02年1月)でITサービス売上構成比9%と有力ITメーカーではきわめて低く、同社マイケル・デル会長はこれを早急に3倍まで伸ばすと発言している。

 このためデルは02年10月、ITサービスのコモディティ化を宣言した。デル会長は、「自社ITサービスは既に40-50%もコストダウンを実現してきた」と語り、これからのサービスに革新をもたらすと次のように説明した。「デルが創り上げつつあるサービスモデルは、セミカスタムのサービスとビジネス価値増大、即ち大幅コストダウンという2つの特徴をもつ」チャネルを使わず直販のデルに反感をもつ米システムインテグレータ(SIer)は多い。

 その1社、リリエン・システムのドルーブ・グラチ副社長は、「米SIerの多くはデルの新サービスモデルを脅威とは感じていない。商売で利益さえ上がれば誰でも立派なサービス体制を創れるからだ。わが社は既にマイクロソフトExchangeやオラクルソフトでSMB(中小企業)向けプリパッケージ型サービスを開始している。安いプリパッケージ型はSMBには適するが、エンタープライズはデルのようなサービスは採用しない」とデル対抗意識を強調した。

 また、あるSIer社長は、「知り合いのVARがデルサーバーをストレージ管理用に多数販売していたが、デルサービス体制が不満があるため、IBMに全面的に切り替えてしまった」と語った。このようなSIerの意見にデル会長は次のように反論する。「サービスビジネス拡大を宣言したわが社は、このコモディティ化を系統立てて行う。決して思い付きで新モデルは創らない。このためSIerやVARの買収も行う。わが社は買収第1弾として02年春、マイクロソフト商品のサービス会社『プルーラル』を買収し、自社サービスの弱い部分に組み入れた」

 さらにデル会長は、現在デルが計画中の新サービスモデルについて次のように解説した。「デルが計画するITサービスは1万5000ドル(180万円)から5万ドル(600万円)の固定価格のプリパッケージだ。この当初契約した固定料金で範囲内のカスタマイズ要求に柔軟に対応する。わが社がサーバーやパソコンで成功してきた安値価格を実現できた手法を、そのままサービス商品にも利用する」その極意の一部も次のように明かす。「セミカスタム型サービスのコストダウンを実現する極意は、同一のカスタマイズ手法を何万、何十万社に繰り返し使えるよう工夫することが最も重要だ。その工夫のポイントはまさに誰もが真似できないビジネスモデル特許に値するだけの知的所有物だ。新しいサービスは03年2月からの新年度に投入する」(中野英嗣●文)

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