WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>連載第134回 Linux採用を積極化

2002/12/16 16:04

週刊BCN 2002年12月16日vol.970掲載

 政府主導でLinux普及に最も注力しているのは中国とドイツであることはよく知られている。中国科学院はソフト会社「中科紅旗軟件技術」を設立して紅旗Linux(Red Flag Linux)、紅旗オフィス(Red Flag Office)を開発した。

米政府、NASAが先導


 政府主導でLinux普及に最も注力しているのは中国とドイツであることはよく知られている。中国科学院はソフト会社「中科紅旗軟件技術」を設立して紅旗Linux(Red Flag Linux)、紅旗オフィス(Red Flag Office)を開発した。

 中国政府は発展途上にある政府としては高額なウィンドウズライセンス料は自国におけるIT普及の阻害要因になると考え、自国版Linuxを開発し政府機関、学校におけるLinuxの普及に力を入れる。中国政府の動きを見て、ブラジル、インドなど人口の多い国の政府もLinux普及への国策を練り始めている。発展途上国だけでなくドイツ政府も、自国の電子自治体の基幹プラットフォームとしてLinux採用を決断した。

 米政府機関もLinux採用に積極的だ。このためワシントン地区では政府機関のシステムを専業とするSIerの多くも、Linuxをビジネスの中核に据えている。米国技術標準を策定する「米国立標準技術研究所(NIST)」「連邦安全局」も行政機関にLinuxが広く浸透することを狙って「ナショナル・インフォメーション・アシュアランス・パートナーシップ(NIAP)認定制度」を発表したからだ。レッドハットやLinuxベースのSIerはNIAPに熱い視線を注いでいる。

 国防以外の米政府機関でIT予算が最も潤沢な「米航空宇宙局(NASA)」はLinux導入に最も熱心な政府機関だ。NASAは科学研究計算用パソコンやサーバーにLinuxを採用するだけでなく、デスクトップへのLinux採用を研究し始めているとワシントンのSIer「アドネット・システム」のジム・ウィードマンCEOは次のように語る。「わが社はNASA向けに多くのシステムを同研究所の指定でLinuxベースで納入してきた。そして現在NASAは、われわれ出入りのSIerに対してLinuxパソコンの検証作業を発注している」。

 そして同社は現在レッドハット版や仏ソフト会社開発のデスクトップLinux「リンドウズ(Lindows)」のテストを繰り返し、逐次NASAへ結果を報告している。NASAがデスクトップまでLinuxにこだわるのはLinux開発コミュニティのリアルタイムのバグ対策にあるようだ。NASAなど米政府機関はLinuxだけでなくオープンソースのソフト利用に積極的だ。NISTはオープンソース・ソフトに適合する条件を集約した「GPL」(ジェネラル・バブリック・ライセンス)」準拠を出入りSIerに強く求めている。

 GPLのルールはこのツールで開発したアプリケーションの第3者へのソース公開、修正、再配布の自由を強制する。従って、当ツール準拠のソフトウェアで発生するバグ、不具合、機能不足はオープンソース開発コミュニティによって即刻対応される。このためGPL準拠は商用ソフト開発には不向きとの批判もあるが、行政府にとっては極めて都合のよい基準なのだ。(中野英嗣●文)
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