WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>141回 NECとHPがアウトソースで提携

2003/02/10 20:29

週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載

 2002年12月、NECと米HPは米国、中国、日本でのアウトソーシングサービスの強化を狙って提携した。わが国有力ベンダーのNECは国内でもITサービス、とくにアウトソーシングではIBM、富士通、日立製作所の後塵を拝している。(中野英嗣●文)

米国でのサービス強化狙い

 2002年12月、NECと米HPは米国、中国、日本でのアウトソーシングサービスの強化を狙って提携した。わが国有力ベンダーのNECは国内でもITサービス、とくにアウトソーシングではIBM、富士通、日立製作所の後塵を拝している。HPは世界市場でアウトソーシング強化を狙い100か所以上のデータセンターを運営しているが、わが国では強力な事業者ではない。そのため国内ではNECのHPとの提携目的が必ずしも明確ではなかった。

 しかし、03年に入ると、NECの同提携の当面の狙いが、米国でのアウトソーシング強化にあることがはっきりしてきた。米国NECソリューションズは02年2月、eビジネスサービス企業「ニテオ(Niteo)」を米国でのソリューションビジネス強化のため買収し、完全子会社としている。ニテオは01年9月に破綻したソリューション・プロバイダ「ゼファー」の役員らが設立した企業だ。しかし、ニテオは知名度が低く、NEC子会社であることも徹底されていなかったため、大きなアウトソーシング案件を獲注できず苦戦していた。

 米国NECビジネス戦略担当GM、ユージ・イチムラ氏は次のように語る。「米国NECソリューションズ売上高に占めるサービス比率は20%だ。これをNEC本社からは、50%以上、できれば55%以上に拡大せよと命じられていた。今回のNECとHPのアウトソーシング提携で、米国NECはこの高い目標への突破口が開かれた」

 HPサービスアライアンス取締役、スティーブ・ハネー氏は「HPはNECに対してデータセンターやマネジメントツールなどを豊富に供給できる。しかし、HPサービスの最大の特徴は、IBMのようにすべてを自社技術で取り囲むのではなく、最適なマルチベンダーサポートを提供できることだ。1社の技術独占を好まない多くのエンタープライズはIBMでなく、HPサービスを選択するはずだ」と語る。NECはUNIXサーバーのフォルトトレランス(無停止)機能開発では先行している。

 また、HPは米国のエンタープライズのアウトソーシングでは多数の著名企業をクライアントにしている。また、ニテオはBEAのミドルウェアを採用したウェブシステム構築では優れた技術をもっている。「この3社それぞれの特徴を合わせれば、米国におけるNECサービスを大きく伸ばせるとNECは判断し、HPとの提携を決断とした」と、米アナリスト、エール・フランコ氏は分析する。

 NECとHP提携の狙いの1つに、NECは日本で、HPは米国でそれぞれ相手にメリットを与えることが課題としてあげられている。HPは日本におけるNECのプレゼンスをメリットとして利用し、NECは米国におけるHPのアウトソーシング設備や実績をメリットとする。ニテオCEO、ジョン・ケリー氏は次のように語る。「NECのニテオへの出資が、ニテオの将来へのドアを開いた。NECとHPの提携はニテオを子会社としたNECに、アウトソーシングビジネス拡大のドアを開いた」


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