WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第155回 サン、低コストデスクトップに参入

2003/06/02 16:04

週刊BCN 2003年06月02日vol.992掲載

 2003年5月、サン・マイクロシステムズはデスクトップ市場に参入するためのソフトスイート「Mad Hotter(マッドハッター:開発コード)」を発売することを表明した。このソフトスイートは、サンのスターオフィススイート」、「Mozillaのブラウザ」、「GNOME(グノーム)インターフェイス」、「Evolution(エボルーション)eメールおよびカレンダリング」、そして自社シンクライアント「Ray(レイ)」及びx86デスクトップで使えるJavaカードからなる。

50-100ドルで提供へ

 サンのソフトウェア担当ジョナン・シュワルツ上級副社長は次のように説明する。「マイクロソフトは四半期にデスクトップだけで50億ドル(6000億円)もの売上高だ。現在マイクロソフトのデスクトップ環境は200ドル(2万4000円)ぐらいだが、サンはこれを50-100ドルで実現する」

 さらに同上級副社長は、「マイクロソフトを代替するコストが安く、セキュリティ万全なデスクトップ環境を提供したい。サンはマッドハッターをx86ベースのデスクトップベンダーにも提供し、世界的にボリューム販売を狙う。さらに当社はSIer(システムインテグレータ)が顧客のウィンドウズ環境をマッドハッターにマイグレートするためのプロフェッショナルサービスとソフトツールを提供することを計画している」と語る。

 サンはマッドハッターをSolarisワークステーション、Rayシンクライアント、そして発表しているx86ベースLinuxデスクトップに搭載する。サンのスコット・マクネリー会長は、「米エンタープライズは景気低迷でIT予算を軒並み20%カットされ、何千、何万台という高額なウィンドウズ・コスト削減に躍起だ。このためIT部門はきわめて大幅なデスクトップコスト削減ソリューションを探している」と前置きして、次のように語る。

 「サンはマイクロソフト市場を狙うつもりはない。わが社はSPARCとSolarisで高い技術力を実証してきた。このサンが、コスト高に苦しむエンタープライズに救いの手を差しのべる責任がある。同じユーザーインターフェイスをもつファットクライアントSolarisワークステーション、Linuxベースx86のフィットクライアント、そしてシンクライアントRayの品揃えで、潤沢なデスクトップ選択肢を提供する。われわれはデスクトップの複雑性解消とコスト大幅低減を実現する。ウィンドウズの高価でもゼネラルパーパスを使いたいユーザーを対象にするつもりはない」

 サン・ソフトウェア・マーケティング担当アニル・ガードル副社長は、「サンのマッドハッターはあらゆるアプライアンスで稼働するようデザインされている。ベンダーは、それがターミナル、AV家電、モバイル端末であれLinuxベースであればデバッグやテストなしに使える。またx86パソコンではコールセンター、高校・大学そして大規模病院から多数の引き合いがサンに殺到している。これらの業種は単一アプリケーションなので、ウィンドウズは不要で、SIerのデスクトップ納入コストも大幅に削減する」と説明する。(中野英嗣●文)
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