WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第172回 地位獲得と体質強化

2003/10/06 16:04

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

 米国ではピープルソフトによるJ.D.エドワーズの買収、オラクルによるピープルソフトの敵対的買収など、ソフト業界のM&A(合併・買収)と並んで、チャネルのVAR(付加価値再販業者)、SP(ソリューションプロバイダ)の買収が急速に進んでいる。米国のチャネルM&Aの主役は、年商2000-5000万ドル(24-60億円)の中規模チャネル企業だ。IBM、HPなどチャネルへの影響力が大きな有力ベンダーも、自社パートナーのM&Aによる大規模化を歓迎している。

米国チャネル買収劇

 例えば年商2200万ドル(26億円)のシステムソースは、1500万ドル(18億円)のコネクテッドリソースを買収した。米国ではSMB(中小企業)対象の中堅SPは極めて少い。従って、買収によって年商4000万ドル(48億円)となったシステムソースは、IBMなどからも重視されるパートナーとなった。これまで米国SMBユーザーは、マルチベンダーでシステムを構築し、それぞれ異なるベンダー製品を別のチャネルから調達するというのが一般的だった。しかし、マルチベンダー、マルチチャネル調達は、IT予算が絞り込まれる環境では、TCO(所有総コスト)削減にも十分機能しないことを経験したユーザーは多い。

 買収によって中堅SPの地位を獲得したシステムリソースのボブ・ロスウェル社長は、「チャネル間のM&Aは、すべてのIT製品とこれにともなうITサービスをシングルパートナーに任せたい、と考えるユーザーが急激に増えていることによって加速している」と次のように説明する。「SMBユーザーもワンストップショッピングを強く望むようになった。従って1社のSPが、ハード/ソフト製品の納入から、納入後のシステム構築、それ以後のメンテナンス、ネットワークやセキュリティの監視サービス、そしてIT資産管理までの責任をもてることを強く望む。これらのサービスのどれか1つが欠けると、そのSPは調達先からはずされてしまう」

 米国には、サーバーはIBM、クライアント機器は旧コンパック、というユーザーが極めて多い。コンパックがHPとなった現在、SPはIBMとHP両ベンダーの認定チャネルであることも競合上有利となる。「HPのパートナーとIBM系列が合併するというケースも目立つ」とIDCアナリスト、ハーク・ニコラス氏は語る。また、中小ディストリビューター(卸売り)同士のM&Aも多くなった。これは、取り引き先SPを増やすことで、ベンダーへの発言権が強くなるからだ。多くのテレコムが業績悪化で、有能なITスタッフを放出していることも中小SPの人材強化に役立っている。ワンストップ化を推進するうえで、ネットワーク管理スペシャリストも陣容に加えなければならない。モルガンのITアナリスト、ドム・ブラウン氏はチャネルM&A加速理由について次のようにいう。

 「ユーザーは、チャネル選択でワンストップサービス力と経営体質を重視するようになった。大規模化で生産性が向上し、損益分岐点が下がることで、SP体質が強化されることもユーザーは望んでいる」アナリストもLinuxがデスクトップでもサーバーで成功したように急速に立ち上がるのは難しいと考えている。しかしそれは時間が解決し、マイクロソフトがLinux対抗のため、オープンソース化など思い切った手を打たないと、いずれデスクトップもLinux時代が来ると予想する。マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、Linuxに対し強気の姿勢を崩さない。しかし同社のジョン・コノアーズCFO(最高財務責任者)は、「デスクトップLinuxは独禁法に次ぐ、当社にとって第2の脅威だ」とウォールストリートで説明している。(中野英嗣●文)

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