テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>10.総務省の来年度概算要求(3)

2003/10/06 16:18

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

 「日本のデジタル放送の特徴は、移動体でも鮮明な映像を受信できるところ。さらにハイビジョンに近い画質で受けられるようにする技術開発にも取り組んでいる」(田中栄一・情報通信政策局総合政策課長)――。今年12月からスタートする地上波デジタル放送に、総務省では移動体分野における新たな需要創造を期待する。(ジャーナリスト 千葉利宏)

コンテンツ流通の多様化に対応

 これまでの自動車用テレビは走行中、画面が乱れて見るに耐えない映像だったが、デジタルテレビではこうした問題も解決することが可能になる。すでに、テレビ付き携帯電話が三洋電機などのメーカーから技術発表されており、テレビを見られるだけでなく、録画できる機能も搭載。いまや携帯電話もカメラ付きが主流だが、将来的にはテレビ・ビデオ・カメラ付き携帯へと進化することも予想される。

 端末の多様化が進み需要が拡大すれば、当然、コンテンツ需要も高まっていく。個人が作成した映像などのコンテンツを簡単にネットワーク上に流したり、個人対個人で取引されたりといったケースも想定され、コンテンツ流通はますます多様化する。総務省では、従来のコンテンツ流通は「マス・プロ・ビジネス」の領域がほとんどを占めていたのが、今後は「パーソナル・アマ・ノンビジネス」の領域も拡大すると予測。そうした社会的な変化に対応した「総合的なコンテンツ政策が必要になってきた」(田中課長)との認識だ。

 来年度の概算要求でも、コンテンツ分野は新規の案件が目白押しだ。e-Japan戦略IIに盛り込まれたウェブ情報のアーカイブ化では、国立国会図書館などが取り組んでいるアーカイブ化を促進するため、画像情報のデータベース化に不可欠なメタデータ(タイトル、作成者、著作権などコンテンツの属性情報)の標準化や、アーカイブ化した情報の利用に関する研究・実証に取り組む考え。美術館・博物館などに保存されたデジタルコンテンツを、ネットワークを通じて利活用する研究開発も予算の増額を求めていく。今年度から3年計画でスタートしたブロードバンド・コンテンツの制作・流通では、地上波デジタル放送の開始に合わせて放送コンテンツの利用を促進するための開発・実証に力を入れ、著作権などの権利処理業務を円滑にするための仕組みづくりを進めていく。

 「パーソナル・アマ・ノンビジネス」領域に対応した施策では「コンテンツフリーマート(蚤の市)の実証」に取り組む。個人が発信するコンテンツでは、著作権などの権利を管理・保護しながら有料で流通・交換する手段が確立されておらず、不正コンテンツの流通を防止する手段も十分ではないのが現状だ。今回の施策では、個人間における適切なコンテンツ流通・交換を可能とする技術や仕組み(コンテンツフリーマート)を開発・実証するのが狙い。同時に、著作権を侵害した不正コンテンツの流通防止技術の開発も進めていく。また、有害コンテンツ防止の観点から、現在はパソコンで実現している有害コンテンツを遮断するフィルタリング機能を携帯電話などモバイル機器でも実現する研究開発もスタートさせたい考えだ。セキュリティ関連では、ネットワーク上の“なりすまし”防止のための本人確認機能を備えた高度なネットワーク基盤を構築する研究開発や、ネットワークセキュリティに精通した高度な専門家を養成するための人材育成事業にも取り組みたいとしている。

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